七福神レンタルガチャでなに狙う?

ちびまるフォイ

お前だけいればいいんじゃね

就職活動もうまくいかず、何をやっても楽しくない。

食事をとってもゴムを噛んでいるようにしか思えない。


まさに人生の末期待ったなし。


そんなときに、レンタル七福神のチラシがポストにぶち込まれていた。


「えっと……あなたの好きな七福神をお貸しします。

 これで人生大逆転……?」


札束風呂に入りながら「この石のおかげでこんなにモテました!」とか

そんなたぐいと同じレベルじゃないかと、流すこともできたが

すでに人生の終末を見ているのですがるようにレンタルした。


届いたのは真っ黒い体で、なぜか武器を持っている神様。


「我は毘沙門天! 汝に我が恩恵をさずけよう!!」


「おお! 本当にレンタルできた! すごい!!」


感動のあまり拍手で出迎える。

首には「レンタル」と書かれた首輪が見える。


「それで、毘沙門天は俺に何をしてくれるの?」


「なんだと思う?」


「合コンでOLに年齢効いた後みたいな返ししなくていいから」


「我は貴様に屈強な体と、荒ぶる心を授けよう!!」


「え……び、微妙……」


毘沙門天をレンタルしてから1週間は病気にもならず

どれだけ遊んでも疲れることはなかった。まるで若返ったような気分。


「では、レンタル終了だ。我は帰るぞ」


「神様なのに、人間の課したレンタル制限には従うのね……」


「それこそ一生の不覚。この首輪をつけられたばかりに

 我は神の体をもってして、人間の家畜となり下がってしまったのだ。

 この先、都合のいい神のように使いつぶされるのかと思うと……」


毘沙門天の首輪から警告音が鳴った。


「さらばだ」


毘沙門天は去っていった。

七福神レンタルは一度返却しないと次を借りれない。


再びレンタルしようと電話をかけた。


やがて、また別の神様がやってきた。


「ふぉふぉふぉ。わしは寿老人。あたりをひいたな、若造」


「あなたは俺にどんなメリットを与えてくれるんです?」


「えー?」


「ど ん な! 効 果! あ る ん で す か!!!」


「ふぉふぉふぉ。そりゃもちろん、人類誰もが望むことじゃよ」


寿老人は杖をふると、きらきらした花吹雪が待った。


「ふぉふぉふぉ。わしはお前に長寿の力を与えた、よかったな。

 わしをレンタルしている期間中は健康寿命がのびまくりじゃ」


「えーー……び、微妙……。

 なんかこう、もっとすぐにいい効果はないんですか?」


「えーー?」


「もういいですよ!!!」


健康的に寿命を延ばせたらいいとは思うが、七福神にしては恩恵が薄すぎる。

もっとすぐに充実した毎日を送りたいのに。


「うーーん。このままレンタルしても、届くのは毎回ランダムだしなぁ。

 カブりはじめたらそれこそ意味ないよなぁ……」


また毘沙門天だの寿老人だのが届いたら、また残念な気持ちになる。

投函されていたチラシを眺めながらどうしようかと悩んでいた。


「あれ? これってレンタル制限がないぞ?」


1回レンタルしてからは、1回返却しないといけないルールはあるが

1回でレンタルできる上限はどこを探してもなかった。


ということは、


「七福神をいっぺんにレンタルできるかも!!

 全部そろったら、神にも等しい力がもらえるんじゃないか!?」


レンタルとはいえ、七福神が全員そろったら無敵だ。

人間ひとりの人生を好転させることなどわけないだろう。


問題なのは七福神をすべてレンタルできるお金がどこにもない。

腎臓を売ってもまるで手に入らない。


そこで、七福神レンタルに電話して1神だけ呼び寄せた。



「よばれてとびでて、恵比寿天〜〜♪」




「おっしゃーー!! 狙い通り!!」


レンタル七福神に呼び寄せる前に事前に調べて一番欲しい神だった。

届いた神によって作戦を変える予定だったが、恵比寿天なら一番いい作戦ができる。


「わったしは、あなたに商売繁盛の幸運を——」


「知ってます! ぜひお願いします!!」


「あいあいさ〜〜」


恵比寿天は手のひらを俺に向けて力を使った。

俺の実家が文房具屋ということもあって、恵比寿天が一番メリットが大きい。


「いらっしゃいいらっしゃい! 人気の「ふぬけしごむ」はこっちでーーす!」


予想通り、新発売したスライム状の「ふぬけしごむ」はスマッシュヒット。

飛ぶ鳥を撃墜する勢いで売れていった。


「えびすえびす、商売繁盛あっぱれじゃ」


「ありがとう!! 恵比寿天!!」


この時点ですでにかなりの儲けが出て幸せに近づけたが、ここで止まるのは凡人。

俺は稼いだ金に手を付けずにひたすら貯蓄へと回した。


そして、七福神すべてをレンタルできる資金力がたまった。


「ついにこの時が……!! ここまで長かった……!!」


頭にはこれまでの過去が走馬灯のように浮かんでは消えた。

これから始まるバラ色生活が待ち遠しい。


緊張しながらレンタル七福神に電話をかけた。


『はい、レンタル七福神デリバリーです』


「七福神をレンタルしたいんです」


『かしこまりました、では1神お送りしますね』


「いえ、全部ください」


『え?』


「全部です。それだけのお金はあります」


『少々お待ちください。専用の準備をしてまいります』


何秒か保留音が聞こえたあとで、電話口に相手が戻ってきた。

きっとこんなのは特別対応が必要なのだろう。


「七福神の全員まとめてレンタルはできますか?」


『はい、ご利用いただけます。すぐにお送りしますね。

 その際、首が見えるようにお願いします』


「え? あ、はい」


電話が終わってからしばらく待っているとついに七福神がやってきた。



「戦いの神、毘沙門天!」

「食べ物担当、大黒天!」

「商売の神、恵比寿天!」

「長寿の神、寿老人じゃ」

「恋愛の神、弁財天♪」

「家族良好、布袋尊!」

「幸運担当、福禄寿!」


「「「 7人合わせて、七福神!! 」」」



「おおお! 圧巻だ!」


ついに七福神全員をそろえることができた。

もう何が起きても幸せにしかならない。まさに神も同然の力を手に入れた。


「あれ? そっちの人は?」


七福神に交じってスーツの人が立っていた。


「わたくしは七福神レンタル会社のものです。

 7つそろえられたお客様には特別対応をさせていただいています」


「本当ですか! ありがとうございます! 何があるんですか?」


スーツの人はにこりと笑って、俺の首にソレを取り付けた。



その後、七福神レンタルのチラシは書き換えられた。




『なんと! 今なら七福神すべての力を宿した"強欲神"が来るかも!?

    あなたのレンタルお待ちしています!!!』

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