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「その、振られたんです」
「え、なんで」
どゆこと? そんなところまで話が進んでいたの? いつの間に?? 告白はもっと先だと思っていたのに。
「少し前の彼女の為に作ったクマさんのラテアートを渡した時、凄く喜んでくれたんです。その後も何度も来てくれるうちに、少しずつ話せるようになって。すごく楽しくて。彼女が来てくれる日を心待ちにしたりして。今まで向けてくれていなかった本当の笑顔を僕に向けてくれるようになって、ただただ嬉しくて。もっともっと彼女のことが好きになって。そうしたら突然、本当に突然気持ちが溢れてしまって」
気持ちが溢れて?
「カフェラテを手渡しながら言ってしまったんです、好きです、って」
「え」
「本当に無意識で、告白することなんて少しも考えていなかったのに、急に口が勝手に動いてしまって・・・彼女のあの表情、凄く、申し訳ない事をしてしまいました・・・」
そう言って熊谷さんはがくんと肩を落とした。
そうか、そんなことが・・・。好きの気持ちが溢れて口から勝手に出てしまったのだろうか。それほどに彼女への想いは大きくなっていたのだろう。
「元気を出して、熊谷さん」
ここで慰めの言葉を口にして何のためになるだろう。初めての恋に玉砕した彼をたらればで慰めたとしても、きっともっと辛くなる。世界は上手く行かない方が当たり前なんだ。
「痛みを知っている人ほど、人は優しくなれると言います。告白をして自分のことよりも彼女のことを思えたあなたは凄い。すでにとても優しい人。けれどもっと優しい人になった。それはとても素晴らしいことだと思いませんか? 恋は人を成長させてくれるものでもありますから」
「・・・僕は成長できたのでしょうか」
「もちろん、とても素敵に」
例えそれが甘い恋ではなくても。人生は一度きり、だからこそ失敗を繰り返して成功を導くものだから。
愛したことは罪じゃない。彼女を想った気持ちに嘘はないから。
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