転移に失敗した

MK26

プロローグ

神と聞くと大体の人は人類より凄く、寿命も無限であると想像するだろう。


だが、実際は違う。


少なくとも私含め周囲の神は人類と大差ない。勿論縦社会だ。


当時の私は人類で言うところの『社畜』だった。


その時私はある不祥事をしでかした。


だが、どうにか回収には成功した。


これが物事の始まりだった。









ああ、だるい。


学校への道を歩きながら私はそう思う。


私、『宿木 柊』は高校1年生だ。だが実際は6時に起き、20時に家に帰ってくる、まるで社畜のようだ。いや、社畜よりはマシかもしれない。


もう学校に通い始めて1ヶ月になる。もうすでに私の目からはハイライトが消え失せていた。それは親からの指摘で気づいた。

そんな事を考えている間に学校に到着する。元々いた中学校の人間はいない。だが、クラスで話す人もいない。


私は机に臥す。


ああ、逃げたい。人間関係からも学校からも逃げたい。そんな事は出来ないと判っててもそう思ってしまう。


ふと、顔を上げる。身体が分解されてるように見える。他の奴も同じ様で騒いでいる。


もう、どうでもいいや。


そして私は意識を失った。









気がつくと私は変な場所にいた。だが、見覚えが無い。


目の前には疲れ果てた若めのおっさん。


「ま、まにあった…」


何が間に合ったのか私には判らなかった。


というかここはどこだ。


そして責任者はどこだ!?


「ああ、気づいたようだね。」


「な、何があったんだ…」


「単刀直入に言えば、君は転移に失敗した。」


「…え?」

いきなりの事に頭の処理が追いつかなかった。ちょっと待て…転移だって?まるでよくある異世界転移小説の様じゃないか。信じたくはないがこれが事実だとするならば目の前にいる男は神の類だろう。

だとすれば、つまりそう言うことだ。


「…俺死んだァ!?」


「いや、死んでないから!ギリギリ死んでないから落ち着け!!」

「嫌だあああああああ!!こんな中途半端に人生終わりたくないし幽霊にすらなれないなんて嫌だああああああああァ!!」

「落ち着けェ!!」


数分後、どうにか落ち着いた私は弁当(神が取り寄せてくれた)を食べていた。

本当に頭が下がります。

「つまり、神は上司の神に命じられて私達を異世界に勇者として跳ばしたはずが私だけこうして転移に失敗したということか。」

「そう言うことだ。つーか36日寝てない奴に大掛かりな仕事任せんなよ老害が。そんなブラック営業やってるんだから人間が真似し出すんだよ。」

「ブラック企業は神が作り出したモノだったのか。」

途中から神の愚痴になっていたが私は別に気にしてない。にしても神もここまでブラックだと人間と大差ないように思えてきた。

「ところで、転移失敗した人はどうなるんだ?」

「実際こういう事が一回も無かったからそれに対する対応も考えられちゃいない。というかお前さんが転移したらクラス中最低能力でハブられて放り出されてそのまま野垂れ死にというオチ。」

「それよりはマシって事か。」

思ったより運命は残酷でした。逆転なんてないというのは知ってたけどいざ実際にいわれるとつらい。

「にしても、勇者にならないで済むのは嬉しいな。」

「そりゃあ、何故だい?お前さんたちの年頃にとっては憧れなんじゃ無いのか?」

確かに、神の言うことはごもっともだ。だが、それなりにもかかわらず理由がある。

「大体そういうものはろくでもない理由だったりするんだ。魔王なんぞいなくて他国との戦争の駒にしたりだとかよ。」

「まあ、二分の一でそれだから否定のしようが無いな。」

そうとするならば私は意外と運いいのかもしれない。だが、死んでもいないし生きてもいない状況だから運が悪いのかもしれない。

「で、お前さんをちょっと弄ってからちゃんと送り出そうという話だ。」

「なる程…余り例を見ない話だから3分ぐらい考えさせてくれ。」

「分かった。因みに付けれる特典は2つな。」

さて、付く特典は2つとなる。とりあえず収納系は確定。

残り一つだが…やはり丈夫さか?それとも鑑定系?それとも属性無効?だが、能力強奪系も捨てがたい。だが、能力強奪系だと最初は弱いので死ぬかも知れないし属性無効だと物理で殴られ続けて死ぬかも知れないし鑑定系だと『お前は知りすぎた』なんかで死ぬかも知れないし…やっぱり身体強化だな。

他のは考えついたがそういうのは物語の中だからこそ使えるのであってこれは物語なんかじゃないしそんなモノを選ぼうものなら大体ハードモードだし序盤で死ぬ。

「答えは出たか?」

「身体強化と収納系でお願いします。」

「分かった。じゃあ鉱物資源と食糧資源が豊富なところに跳ばすぞ」

「では、よろしくお願いします。」

そう言うと、身体が教室から転移した時と同じ様な感じで分解されていく。


そして私は意識を失った。よく考えたら二回目だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る