第18話 格闘大会1
3人が仕事を終えて、いつもの宿屋に帰る途中、詰所から町に入って、3つめの角で、1人を数人が、ふくろだたきにしている場面に出くわした。
「おい!いいかげんにしとけよ!」
どう見ても、仲間内のもめごとには見えないので、長谷部が止めに入る。
「なにィ・・・って。ひゃ、百人殺しのハセベ・・・。」
例の一件以来、ひそかに通り名になってしまった、あだ名で呼ばれてしまった。
最近はどこに行っても、そう呼ばれるので、言われるたびに修正しているのだが・・・・。
「・・・あ、相手が悪い!行くぞ!」
長谷部が訂正させることもできず、彼らは逃げ去って行った。
「おい!大丈夫か?」
田尾が手を貸してやる。
年のころは10代後半ぐらいか。若い衛兵だった。
「ありがとうございます。あいつらが女性にからんでいたんで、やめさせようとしたんですが、逆にやり返されてしまって・・・。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「確かに、最近は衛兵と外部から来たものとの間のもめごとが増えているな。衛兵の抑止力が目に見えて落ちているのは、ゆゆしき問題だ。まあ、外部から来た者同士のもめごとも多いようだが。」
レグリンと名乗った、フクロにされていた彼を送って行った衛兵詰所で、衛兵隊長にそう言われ、いすみと田尾はばつが悪い。
当の長谷部はそしらぬカオ。
この世界の「衛兵」は、建前上は町の治安維持組織ではあるが、実質的には、その町の領主の自警団的な立場になるので、法的に認められた逮捕権等の警察力を持っているわけではない。
あくまで、実際の彼らの「腕っぷし」を恐れて、言うことを聞く・・・。というか、「悪さをするのを控えているだけ」だけなので、対峙した衛兵が弱そうなやつであれば、効果的な抑止力をもたない。
「でも、隊長さん。彼、若い割には、なかなかいい身体してるし、そう弱いことはないんじゃないのかい?」
田尾が隊長に聞いてみる。
実際、レグリンは長谷部よりも頭一つ背が高く、肩幅も広い。堂々たる体格だ。
「そうは言っても、結局、身体強化魔法を使える連中にはかなわないさ。どんなに体格が良くて、力があっても、強化魔法で身体を強化している連中にはかなわないだろう。」
「衛兵も、基本的な身体強化魔法は心得てはいるが、どうしても、専門家にはかなわない。特にレグリンは、膂力はあるが、魔法の素質があまりないので、1人でも魔法の熟練者がいて、そこを見透かされたらなめられてしまう。
だからといって、いきなり剣を抜いて、けん制するわけにはいかない。そんなことで治安維持を行ったら、そこは暴力が支配する無法地帯だ。」
「衛兵はあくまで、威厳で民衆を従わせるべきで、それができなければいけないのに、最近はそれができなくなっている。」
レグリンはうなだれて、隊長の話しを聞いている。
「レグリンを助けてくれたハセベのように、姿を見ただけで、悪事をはたらくものが逃げて行ったりするようになると理想的なのだが・・・。」
「ここでも魔法かよ。建築だけじゃなくて、警察力にも魔法が必須になるとはね。」
田尾があきれたように言う。
「要するに、衛兵の威厳を取り戻せばいいんっすよね。」
「これなんかどうっすか?」
長谷部が出したのは、3人でいつも行く、食堂でもらったチラシだ。
<ガンボ杯ツィンベッロ大会>
<ガンボ>は、この町の名前だが、
「ツィンベッロってなんだ?」
田尾が長谷部に問いかける。
「ツィンベッロっていうのは、この世界の腕試し大会みたいっすね。魔法力でつくった板?を奪い合う競技らしいっすけど、ようするに相手を叩きのめせば勝ちっていう、競技みたいっす。」
長谷部の強さを聞いた食堂の店主が、長谷部に出場を勧めているようで、大会は概ね15日後くらい。
「隊長さん、これに出たらどうっすか?これで優勝すれば、衛兵の威厳も上がるんじゃないっすか?」
「そうは言っても、ほとんどの参加者は、身体を強化魔法で固めたうえ、力の強い連中だ。
武器を使うのならば、勝負になるが、肉弾戦だと、優勝は難しい。
出場しても、すぐに敗退してしまったら、衛兵の威厳はさらに下がりかねん。」
「大丈夫っすよ。こないだ連中をのした時、この世界の人達に勝てる方法がなんとなくわかったんっすよね。」
「この世界で最強になれるくらいの。」
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