第39話 ブラフに怯える者共

「ねえ、リョータ。さっきから若い娘にやたら挨拶してるけど何で?」


そりゃ未来のハーレム要員だし。


「あれは娼──」


「にゃあ!」


イファナが抱きついてくる。

どうした?!


「ちょ、イファナ?!」


ラックルがイファナを引き剥がす。


「キミは何やってるの?!リョータに迷惑だろう!」


ラックルがイファナに怒りながら言うが、


「いや、俺は歓迎だぞ」


柔らかくて気持ちが良いし、チャージも加算されるからな。


「・・・ふーん、そう」


ラックルがぷくーっと膨れ、俺の腕の抱きついて来た。

これで男じゃなければなあ。


捕虜を囚えている施設につく。


「良し、じゃあリョータ、山羊さん出して」


ラックルが促す。


「山羊さんにゃ?」


イファナが小首を傾げる。

可愛いなあ。


「うん。ブラフなんだけどね。契約を反故にしたらこの羊が怖いよ、って脅しておくんだ。そうすると、契約破らなくなるんだよ」


多分破った結果、国の重鎮が大量消失しているのだけど。


「にゃ?羊にゃ?山羊じゃ無かったにゃ?」


イファナの周りに疑問符が沢山飛んでいる。


「羊の皮を被った山羊だね」


ラックルの答えに、混乱した様子のイファナ。

正常な反応だ。


まあ、山羊さんを呼び出そう。


ぽむ


「にゃ?!」


イファナが全身の毛を総毛立て、その場に尻餅を付き、涙目で、蒼白になり・・・震える。

勘が鋭いと言うのは本当のようだ。


「山羊さん〜、またお願い〜」


ラックルがバフォメットを撫でくりまわし、バフォメットがごろごろのどを鳴らす。


「ちょ・・・馬鹿リーン・・・何やってるにゃあ?!」


イファナが涙声を絞り出す。


「誰が馬鹿だ、この馬鹿猫」


ラックルが不機嫌そうに言う。

君だよ、間違いなく。


「姉ちゃん、自信作作ったで」


バフォメットが、そっと紙を差し出す。


契約に違反した場合、この世の全ての生者が******に隷属します。


と書かれている。

何でだよ。


「うん、いいと思うよ」


ラックルが答える。


「「良い訳ない(だろ)(にゃ)!」」


俺とイファナのツッコミがハモる。


「駄目にゃ、リーン。この話は無しにゃ。手伝いとか要らないにゃ!」


イファナが涙目で首を振る。


「嬢ちゃん、もうちょい利口になった方がええんちゃう?安心し?迅速安心確実の山羊さんコースやで?」


にたあ、と山羊さんが笑う。


「ひっ」


イファナが怯えて座り込む。


「大丈夫だよ、イファナ。山羊さん、話し方は怖いけど、優しい山羊だよ」


そう言って、ラックルがバフォメットの喉を撫でる。

ラックルの恐れ知らずには本当に戦慄する。


「あああ・・・」


イファナが震えて抱きついてくる。


「山羊さん、申し訳ないがさっきの文言はなしだ。加害者側に限定される文言にしてくれ」


まあ、今までのも、等、とかついてたので、アウトなんだけど。


「兄ちゃんがそう言うのならしゃあないなあ・・・最近ぼちぼち人手も増えてきよったし」


山羊さんが書き直す。


違反した者、それを命じた者達、命じた者と意志を同じくする者達


と書き換えた。

うん、まあ、こっち側には被害及ばないだろう、多分。


「そのままでも良かったと思うけどね」


ラックルが言う。

君は実に馬鹿だな。

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