第37話 アブソリュートゼロ

「じゃあ・・・その・・・娼・・・館とかで?」


「そうだな。娼館は最近良く利用している」


と言っても、街で人間の娼館は利用していない。

エルフの集落や猫人の集落に娼館が出来たらしく、そこで誘われて楽しんでいる。

モニター?とかで、代金は要求されない・・・悪いので、寄付の形で、金品等を置いていってるけど。

俺以外の男に会わないのは、正式稼働前だからだろうか。

ちょくちょく、初めての娘とかも混じっている。


「娼館ももう良いんじゃないかな?チャージなら僕がするよ?」


そうは言ってもな。


「チャージ以外の理由で、男として純粋にお楽しみしたいという目的が有るからな」


ラックルはお子様なのか、まだ分からないようだが。


「それも僕がするよ!」


何言ってるの?!

自分の性別を思い出せ。


「その・・・とりあえずチャージしておこうか?ほら、キミも強いチャージをストックしておいた方が良いだろ?」


いや、気持ちは有り難いけど。


「大丈夫だよ。今はイファナに貯めて貰った強いチャージが3つ。強過ぎて使うのが勿体無いくらいだからね」


俺の言葉に、


「へえ」


ラックルがぽそり、と漏らす。


世界が凍った気がした。

聞いたことないような、押し殺したような声。

待って、バフォメット並に怖いんですけど。

世界が震えている気がするんですけど。


怒気、は無い。

むしろ、声に表情がない。

背中を滝の様に汗が流れる。

顎を汗が滴り、落ちる。


何も問題ない筈なのに、これは一体・・・?


「えっと・・・ラックル・・・さん?」


こわごわ、話しかける。


「何故イファナ、と?イファナと、何をしたの、かな?」


そう言われても・・・イファナ、将来ハーレムの第二席に収まる予定だし。

ラックルが妹思いなのは分かっているけど・・・いや、これはイファナを心配して?

ちゃんと同意の上だよ?


「イファナとは、ちょくちょく会ってる。将来の話をしたり、リーンの情報流してもらったり・・・一方で、イファナもちょっと困った状況になっててね」


すっ、とラックルの顔が戻り、少し心配した顔になる。


「困った状況・・・大丈夫?」


言っていいのだろうか・・・?

まあ、仲良さそうだし。


「うん・・・今発情期らしくて、異性との強い飢餓感で気が狂いそうになるらしい。囚われてた時の呪術の影響も有るらしく」


俺がそう言うと、


「それ嘘だよ!キミ、騙され過ぎ!猫人に発情期なんて無いよ!この世界の知識無いのをいい事に、色々デマ吹き込まれ過ぎだよ!もっと気をつけて!」


えー・・・いやでも・・・


「まあ・・・良いんじゃないかな。色々教えて貰ったよ、猫人が性奴隷として人気な理由とかを。性に奔放で、熱しやすく冷めやすいとか。身体が柔らかいとか、可愛い人が多いとか」


ラックルが否定する。


「それも嘘!猫人は情が深く、身持ちが堅い。生涯1人しか伴侶を作らないし、奴隷の身でも主人に心を捧げたりする程だよ!身体が柔らかいとか可愛いは本当だけど・・・誘われても絶対に手を出しちゃ駄目だからね!一線を越えたりしたら、一生離れないよ!」


・・・いや、個人差はあると思うよ。

娼館とかやるみたいだし。

・・・まあ、相手した娘が、気付いたらハーレム作成待機列に追加されていくとか、俺以外に客とってないって娘が多いのは気になるけど。


「あの色ボケ泥棒猫め・・・リョータが異世界から来たからって、都合の良い嘘で騙して・・・」


ラックルが呪詛を吐く様に唸る。

キミ、妹の親友に対して酷い事を言うね。

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