俺の部屋に飾られている日本人形がおかしいのだが
髙柳ヒロミ
第1話動く、喋る、日本人形
俺の名前は
「裕暉や、妾わらわは腹がすいだぞ。すまぬが飯を持ってきてはもらえぬか?」
「・・・・・・はぁ」
「なんじゃ?ため息などしおって?何ぞ悩みでもあるのか?」
「俺の頭はいつになったら正常なるのかって考えてたんだよ」
「何故にじゃ?裕暉はさように頭が大変なのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、何でもない。」
「ん?おかしな裕暉じゃの」
俺の最近の悩み。それは、どう言う訳あってか俺の部屋に飾られている日本人形が喋ったり、飯を食ったり、髪が伸びたり、動き回るのだ。
「それより裕暉や、妾は腹が減ったぞ!飯が食いたいのじゃー!!」
そう言ってこのおかしな日本人形はガラスケースの中で駄々をこね暴れ回っている。正直言ってガラスが割るからやめてもらいたいが、今それを言えば奴はもっと駄々をこねるだろから言わないでおこう。
「わーったよ、ちょっと下行って飯持ってくっから待ってろ」
俺がそう言うと、奴は駄々をこねるのをやめ、ちょこんと正座をしている。いつもの事なのでもう気にもとめてもいない。
初めて奴が家に来たのは小学校五、六年生の頃だった。なんでも死んだ婆ちゃんの遺書によると、俺に日本人形を譲り渡すという感じのことが書いてあったらしく、遺品整理の際に俺が家に持って帰ってきたのだが、俺の親父や母親はその日本人形を気味悪がっており持ち帰ることにさえ反対していたため居間などに飾れる訳もなく、お婆ちゃんっ子だった俺はこっそりとその日本人形を持ち帰り自分の部屋に飾った。そして中学校に上がってまだまもない頃だった、その頃俺の部屋では夜中に良く物が動いたり、何かが歩く足音が聞こえていた。俺はその正体を暴こうと夜中の一時頃まで必死に起きていたが、結局何も起こらなかったのでその日は寝ようと電気を消して布団に潜り込んだ時だった、例の足音が聞こえてきた。いま思い返すとあの時の恐怖は今でも忘れられないくらいに怖かった、だが足音の次に聞こえてきたのは、むしゃっむしゃっと言う何かを食べている音だった、そして俺は意を決して布団の近くにあったスタンドの明かりをつけた。それが俺が初めて動き回っている奴を見た瞬間だった。あの時は俺自身何が起きているのが全く理解出来なかった。
そんな事を思い出しながら俺は居間で奴にくれてやるための飯をよそっていた。因みにだがこの事は俺の親父も母親も知っている、なので最初こそ本気で気味悪がっていた二人だが、今では愛娘を愛でるかのように接している。大人というのは本当に怖い生き物だなと思った。
「こんなもんか?」
幼稚園児などが使う茶碗いっぱいに白飯を盛り、冷蔵庫から梅干しを数個とペットボトルの緑茶を持って二階にある自分の部屋へと戻ろうとした時だった、丁度風呂から上がった親父と鉢合わせになった。
「・・・・・・あんまり夜遅くに食うと太るぞ」
「俺が食うわけじねーよ、あいつの分だ」
「・・・・・・そうか、なら食い終わったらちゃんと下に食器持ってこいよ」
「あいよ」
そう言い親父は居間へと姿を消した、俺はそれを確認してから少し足早に自室へと戻った。
「おらよ、飯持ってきてやったぞ・・・・・・あれ?あいつどこに消えた?」
「裕暉や・・・・・・この新しい人形は何じゃ?妾への当てつけぞか?」
持ってきた飯を
「まぁ待て、飯でもくってゆっくりと話しでもしよーや」
「い・や・じゃっ!!これがどういうことなのか説明するのじゃぁっ!」
こうなった奴を止めるには俺がとことん下手に出るしかないのだ、過去にこうして奴の怒りを買って、星になったフィギュアは幾つもあるからだ。
「俺が悪かったよ!な?だからそのフィギュアに罪はねぇだろ?だから頼む!!そのフィギュアから手をどかしてくださいお願いしますぅっ!!」
土下座をすると奴は俺の背中を踏み台にして、炬燵に置かれている飯の元に行きガツガツと無言で食べ始めた。
「・・・・・・せめて頂きますぐらいしろよ」
「ひぃたたきゅいはふっ!!」
白飯をリスのように詰め込みながら奴は頂きますと言って。ただひたすらに飯をかきこんでいた。
「・・・はぁ、最近これが日常になってきたなぁ」
俺はそうポツリと呟き勉強に勤しんだ。
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