番外編[自分に合った武器]

 とある日、瑞樹とビリーは武具屋に来ていた。目的は剣の手入れと防具の補修だ。日々の

手入れくらいなら自分達でやっていたが、オークの一件で大量に斬り捨てたので、血や脂でそれでは間に合わないくらいなまくらになっているので、武具屋に手入れを頼まざるを得なかった。実は瑞樹にはもう一つ目的がある。それは武器を変える事で。何故かというと、自分の戦闘スタイルに剣が合っていないという事に気づいた。不慣れというのもあるが、歌魔法を主軸にしているため、正直な所歌いながら戦うってのは辛いものがある。ちなみにこの件は勝手に買う訳にはいかないのでビリーにも言ってある。


 というわけで店内を物色する。瑞樹はあれこれ触ってみたが、いまいちしっくり来なかった。まず、元の剣より細身のレイピアの様な剣を試してみる。重さは押さえられているが、耐久性は良く無さそう、それに普通の剣より扱いづらそうなのであえなく却下となる。


 次に、もう少し刀身が短いものに目を付ける。短い分、重さは問題無いのだが、刀身が短いという事は、今より余計に相手に対して肉薄しないと駄目になる。ただでさえ現状が精一杯なのにこれ以上肉薄など、一瞬でお陀仏になりそうだったのでこれもあえなく却下となる。


 瑞樹は逆に近づかなくても良い、遠距離武器ならどうか、これなら歌魔法も使いながら戦えるだろうという考えに至る。という訳で次は弓を手に取ってみた。悪くは無いが引き絞りながら歌うのが多分辛い、とても辛い。あと矢を当てるのもそれなりに技術がいる。以上の理由で惜しくも却下。ただ方向性は悪くない、瑞樹はもう少し物色しているとついにこれだ!と来る物を見つける。それがボウガンだ。一度装填しておけばそのまま保持されるし、射程も威力も悪くない。狙いも弓よりは狙いをつけやすい。緊急時に使用する短剣もついでに購入し、瑞樹が使っていた剣は予備としてビリーの家に保管される事となる。瑞樹が初陣をちょっぴり楽しみにしていたのは内緒である。


 余談だが、瑞樹は対アンデッド戦にはボウガンを持っていかなかった。理由は奴らに対して遠距離武器自体が相性が非常に悪いからだ。奴らは痛みを感じない、だからいくら矢を当てても足止めにすらならない。故に瑞樹は仕方無く元の剣を使うはめになり、ボウガンは誰にも知られる事無くひっそりと森の中で初陣を果たしたのであった。

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