Euphoriaー理想と現実のDystopiaー

大祝 音羽

「よっしゃあ、捕まえた!」

「さっすが、兄ちゃんすげぇ!」

「パパがおにだー、にげろー!」

ボクは弟と、まだ小さい妹の手を引きながら逃げる。

たまたまお父さんが休みだったから、公園にみんなで遊びに行った。

鬼ごっこをやろう、と言い出したのはボクだけど、普段外に出たがらないお父さんが一緒になってはしゃぐ姿は、ボクにとって新鮮だった。

お母さんも、木陰からボク達を楽しそうに見つめている。

「こんなに楽しい時間が終わらなければいいのに」

ボクは呟いた。




「…」

目が覚めると、望みもしてない新しい今日があった。

学校だって本当は休みたい。行ったところで、楽しいことなんて何も無い。自分に合わない学校を選んだボクのせい。それに何を言ったところで、結局自分で選んだ進路だから、という言葉で片付けられる。世の中、何もかも綺麗事でしかできてないんだな、って感じる。最近のニュースだってそうだ。

「予算委員会が…」「協議会が…」「処分の決定が…」

謝罪会見で語られる言葉は逃げから出た偽り。

釈明会見で語られる言葉は権力を失いたくないという心から出た偽り。

テレビに出る大人、誰もが責任を擦り付けあって生きている。

他人のせいにするのは当たり前。

陰口も当たり前。


そんなことを延々と考えていると、心はどんどん失望感に沈んでいった。

べつに失望しきったから早く死にたいとかそういうんじゃない。ただ、なんで世の中ってこんなにバカげてるんだろう、って思う。


と、気分を落とすところまで落としてからボクの1日は始まる。

「兄貴、また瞑想?」

「もー、朝から重いなぁ!」

弟のソラと、妹のフユネは、ボクの横を笑いながら通って行った。

そう、これが日常。

それを嫌だとか感じたことは無い。

当たり前に続くことだと思ってた。

今日まで。



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