シーク・オン・バトルフィールド・オンライン
愛妹魅唯
第1話 プロローグ
「イシドールさん!こっち!敵!来た!」
「待ってな!私の高火力武器で一掃してやるから!」
「ほんと?ボクさっきからずっと待ってるんだけど!」
ボクは現状のキツさを訴えながら必死に荒野の中を駆け抜けていた。
『シーク・オン・バトルフィールド・オンライン』通称SOBOと呼ばれるそれは、今最も熱いとされるVRMMOのゲームだ。
SOBOはVRMMO用ガジェット、『レディーメイド・ゲフェーアリヒ』通称レゲアの発売当初より愛され、国内総人口の約四割がこのゲームをプレイしているらしい…(受け売り)。
そんなゲームでボクは……ボクはっ!!!
「なんでチーム戦のイベントに出てひとりで囮ばっかりしとかなきゃいけないんですか!」
「チーム戦だからだよ!囮って大事なんだよ?」
「だからって、反撃しちゃいけない理由ってなんなんですか!」
「それは逃げ回るいろはすが面白いからだよ?」
「何言ってんのお前的な感じで言ってますけど、完全に悪いのイシドールさんですからね!?」
そんなボクの反論をあっはっはと笑って流そうとするこの人はイシドールさん、もちろんプレイヤーネームだ。
彼女はこのゲームの超ベテランでボクなんて足元にも及ばないほどだ……そのせいで彼女の作戦に歯向かえなかったりするのだ。
「イシドールさん!もう無理!!せめて反撃させて!じゃないとボク焼き殺されちゃう
!」
「うん…そろそろかな?」
「え?」
「いろはす!しゃがんで転がって前方にある岩に身をひそめておいて!」
「は、はいっ!」
戦闘モードのイシドールさんはなんというか……すごい。
ボクなんかが理解できるような領域ではないはるか遠くの未来を見てボクに的確かつコンマ単位の狂いもない作戦を与えてくれる。
それでくぐり抜けてきた死線死地の数は………数知れない、ホントにすごい人だ。
「前方の岩に着きました!」
「そしたら魔法弾のリロード!早く!」
「わ、解りました!」
「リロード済んだら三秒後に敵が来るから腰のナイフで対処!一撃目は外していいから顔面を狙え!二撃目は勢いよく振り下ろすんだ!どこでもいい!絶対当てろ」
「え、あっうん!」
ボクは即座に魔法弾をリロードして腰のナイフに手を掛ける、すると…。
「こんな所に居やがったか!てめぇがリーダーのいろはすだな!!」
「(キタっ!ホントにキタ!!)」
「死んでもらおうか!」
流石にそれは困るので、ボクは指示通りに行動する。
腰に回した手を敵の眼前に閃になるように振るう、すると敵は大きく仰け反り体制を崩した。
「(そういうことか!仰け反ったところをナイフで狙って……そして!)」
「ぐわぁっ足がぁぁぁぁぁぁ!!」
ボクが抉った相手相手の足が宙を舞った。
悶える相手を見つめ、ボクは最後の仕上げを行う。
「これでさいごだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「やめろぉ!!」
僕の振り下ろしたナイフは、相手の頭蓋を貫いた。
血ではなく、赤いエフェクトとして飛び出したそれはいくらか出した挙句に、デッドという文字のテロップになった。
「や、やった…やったよ!イシドールさん!」
「うん、こっちも終わったよ~!まさか私の無茶な作戦を本当にやってのけるとはねぇ!さっすがスピードスターのいろはすだっ」
「えへへ……って無茶なっていった!?もしかしてこの作戦……」
「そっ!まず、常人なら成功確率は十八パーセント以下だよ♪」
「そんな意気揚々と言わないで!?」
ボクが死んじゃったらどうするんだよっ!と言いたかったのだが、ニコッと笑ったイシドールさんを見ているとなんだかそんなことも言えなくなってしまった。
「もういいけど次からはちゃんと成功確率高い奴にしてよ?できれば死にたくないから……」
「はいはいはーい!」
「はいは一回だよ!」
そんなふうに言っていると、脳内に参加中のイベントのアナウンスが流れた。
『只今チーム戦イベントに参加中のユーザーさんにお伝えいたします。たった今参加チームのうち半数が脱落いたしましたので、ただいまよりフィールドを草原へと変更いたします。変更線が現れました際には、ジッと待っていただくようお願いいたします。思わぬエラーへとつながります。皆様のご理解のほどよろしくお願いします』
「……だってさ!どうする?いろはすちゃん」
「そうだなぁ……ボクはこの場所で変更線まっといたほうがいいと思うなぁ」
「そっか、ならそうしようか!この際だし、作戦会議でもしながら!」
「そう…だね!ボクもそれがいいと思う!」
ボク達プレイヤーは皆が皆何かを抱えている。
「なら……次はこうしてみる?」
だけど…みんなここでなら強くなれる、だからここにいるんだ。
これは、ボク……私(・)が(・)心身ともに強くなる、物語。
シーク・オン・バトルフィールド・オンライン 愛妹魅唯 @taku11524731
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。シーク・オン・バトルフィールド・オンラインの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます