第102話 最強に抗う者

「ウグッ……ハァ、ハァ……。これでしまいだ……!」


 ルークが苦しげに呻きつつ聖剣を構えたかと思った瞬間、ルークの姿がブレる。

 眩い光を纏う聖剣から放たれる光速の剣閃。

 咄嗟に動き出しから剣の動きを予測し、受け流すよう白夜を抜いた。


――ギャリィンッ!!


「クッ!!」


 『白気(ビャッキ)』による身体強化により、紙一重で嵐の様な一撃を往なした。その余波により弾き飛ばされるが、地を足で掴み受け身を取る。

 愛刀の夜一に目をやると、斬撃を受け流したことにより一部が溶解し、まともに使える状態ではなくなっていた。

 夜一をそっと置き雷薙に手をかけ、ルークと相対する。


「ハァ、ハァ……ハハハッ! 今のも防ぐなんて中々やるじゃないか……! だが、自慢の武器もこの様だ! お前には、いや誰にも俺を倒すことはできないんだよ! 聖剣さえあれば、俺に勝てるやつはいねぇ!」


 眉根を寄せつつ、顔を歪めて苦しそうに嗤うルーク。


「……確かに、凄まじい力です。しかしルーク、君の剣からは何も感じません。この間までのルークの剣は拙くても、魂が籠もっていました。今のルークは、棍棒を振り回すゴブリンと同じです」

「うるせぇっ!!」

「それで本気ですか、ルーク?」

「だまれッ、シリウスゥゥッ!!」


 ルークが聖剣を振るうと、余波だけで闘技場の床板が粉々に砕け散った。

 威力、スピードともに一級品である荒れ狂う嵐のようなラッシュが襲い来る。


 それに対し『瞬雷(ブリッツアクセル)』と『白気纏衣』を併用し、ルークの猛攻を見切り、躱す。


 闘技場には絶え間なく剣の交わる音が鳴り響く。

 白く眩い光と、白く尾を引く雷光がぶつかり合い、空気を揺らす。


 ルークと剣を混じえながら、ルークに剣の振り方を教えていたエトワール村の風景が瞼の裏に浮かぶ。

 しかし目の前には、苦悶の表情を浮かべ眩い光を放つ剣を振るうルークがいる。

 何故君は、そんなに苦しそうな顔をして剣を振るっているんだ。


 ルークの剣撃は凄まじい速さと威力だが、剣筋はあまりにも単純で無機質であった。苛立ちに任せて剣を振るっているだけのようで、お陰で何とか躱し続けられている。


 僕も先程から何回か攻撃を掠らせてはいるのだが、強固な障壁に拒まれて中々ルークにまでダメージが通らない。牽制で放つ生半可な魔術も聖剣の剣閃によりかき消されてしまっていた。


「逃げてばかりじゃ俺を倒すことはできねぇぞ、シリウス!!」


 苛立ちを隠さずに挑発してくるルーク。


「また剣を雑に振って……。そんな大振りじゃただ隙を作るだと散々教えたはずですが」


 そろそろこの速度と膂力にも身体が慣れてきた。

 ルークの一際大ぶりの攻撃を躱し、即座に懐に潜り込む。


「ハァァッ!!」


 紫電を纏う雷薙は雷光を瞬かせ、ルークの魔術障壁ごとルークの身体を斬り裂いた。


「ぐぅっ……! 何……だと……ッ!?」


 ルークは鮮血を滴らせながら驚愕の表情で僕を睨みつけた。

 完全に捉えたと思ったが、ルークは驚異的な身体能力により後ろへ跳躍し致命傷を避けていた。



■ご連絡■


 皆様、お久しぶりです。

 概要欄でもご報告いたしましたが、先日、本作「転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る」が発売されました。

 編集の方からは、とてもご好評いただいていると聞いております。お手に取ってくださった方々、本当にありがとうございます。


 実は現在、二巻発売へ向けて色々と準備を進めているところでございます。

 二巻も一巻と同様、Web版をお読みくださっている読者の方でも楽しめるような作品を目指し執筆をしております。楽しみにお待ちいただければと思います。


 また現在、Web版の更新が非常に遅れてしまっており、大変申し訳ございません。こちらも休載するつもりはなく、一段落ついたところで更新を進めて行きたいと思っております。

 読者の方々にはご迷惑をおかけしてしまいますが、これからも何卒よろしくお願いいたします。


丁鹿 イノ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る