第41話 筋肉の共振
さて、次はムスケルと僕との対戦か。
少し危険そうな相手なので、『洞察』でステータスを確認しておこう。
《
【名前】ムスケル・アブドミナル
【性別】男
【年齢】16歳
【種族】人族
【ステータス】
体力:2900
気力:1500
精神力:200
魔力:200
【スキル】
『操気』『練気』『隠気』『闘気:
》
やはり体力と気力が突出している、典型的な近接戦闘職だ。
『
念の為、自分の能力も確認しておく。
《
【名前】シリウス・アステール
【性別】男
【年齢】12歳
【種族】人族
【ステータス】
体力:4500
気力:5800
精神力:16000
魔力:7200
【スキル】
『超耐性』『洞察』『解析』『操気』『練気』『隠気』『隠密』『魔力操作』『魔力感知』『詠唱破棄』『上級雷魔術』『上級時空魔術』『中級光魔術』『中級火魔術』『中級水魔術』『中級風魔術』『中級土魔術』『中級氷魔術』
》
体力と気力だけ見れば、僕の方が能力値が上だ。
ただし実際の強さは能力値だけでは判断できないから油断は禁物である。
体力と一言で言っても、筋力、防御力、俊敏性など、様々な肉体に関する要素が総合されて数値化されているのだ。
そのため、体力4500の僕と2900のムスケルが腕相撲をしたとしても、筋力よりも俊敏性が高い僕では、ムスケルに負ける可能性は充分にある。
更に実戦では気で身体強化を行うので、より複雑になる。
そのため、『洞察』で見れる能力値は目安でしかない。
「よし。ムスケルもポーションで回復したことだし、ムスケル、シリウス、闘技場へ上がれ」
「分かりました」
「むふん!楽しみですぞ!!」
ムスケルはテンションが爆上がりし、身体から気力を迸らせている。
僕自身も少々テンションが上っていないと言ったら嘘になる。
自然と魔力と気力が高まっていく。
「ふむ、二人とも気合は十分だな。では、試合開始!!」
「『
―――ギュンッ
ムスケルが地面を蹴ったかと思うと、一瞬で目の前に接近し、拳が向かってきていた。
『
咄嗟に強化魔法を発動し、攻撃を回避する。
そして、渾身のパンチを避けられたことでがら空きの鳩尾にカウンターで蹴りを放つ。
―――ゴギャンッ!!!
まるで鉄の板を蹴ったかのような手応えに思わず顔をしかめる。
刀を抜かなかったのは、いくら死なないとは言えクラスメイトを切り捨てるのには抵抗があったからだ。
また使徒空拳の相手に刀や攻撃魔術を使うのは何となく卑怯な気がしたため、この試合は肉体で語り合うことにした。
蹴りを食らったムスケルは、衝撃を殺しきれず後退する。
『
「むぅん…… まさかあれが避けられるとは、流石シリウス殿ですな。しかも咄嗟に放った蹴りでこの威力、密度が高く引き締まった素晴らしい筋肉ですぞ…… おぉ…… 筋肉が共振していますぞ……!!!」
断じてこちらの筋肉は震えてない。
勝手に共振しないで欲しい。
「ふむうううん!! 筋肉と筋肉のぶつかり合い!! これぞ我が学園に求めていたもの!! さぁ、存分にぶつかりあいましょうぞ!!!『
―――ボコンッボコボコッ
お前は学園に何を求めているんだ。
ムスケルの筋肉の質量が増加していき、ただでさえムキムキなのに、もはや筋肉だるまだ。
「ふうううう! 必・殺・突・貫 『
凄まじい質量となったムスケルが突進してくる。
絵面がヤバすぎる、ホラーだ。
直線的な突進であるため、真横に回避する。
「甘いですぞ!! むぅんッッ!!」
僕の回避を視認し、ムスケルが直角に曲がってきた。
あの質量と速度でそんな急に曲がれと思っておらず、接近を許してしまった。
この近さでは受け止めるしかない……!
咄嗟に左手を前に突き出し、『
―――ドォンッッ!
「くっ……!!」
あまりの衝撃に思わず空気が肺から漏れ出る。
ムスケルの突進をなんとか受け止められたが、闘技場の床は衝撃に耐えられず、放射状に亀裂が入る。
「「「嘘ォ!!!??」」」
外野から驚愕の声が聞こえる。
あまりに体格差があるムスケルの攻撃を受け止めたからだろう。
体格差はあるが、身体能力はいくらでも気力で補えるのだ、そこまで驚くことではないと思う。
「ハァッ!!!」
まさか受け止められるとは思っておらず驚愕の表情を浮かべているムスケルに構わず、渾身の気力を込め右拳を放つ。
―――ズドォォンッ!!
「ガハッッ!!」
凄まじい勢いで吹っ飛ばされ、闘技場の障壁に叩きつけられるムスケル。
無理やり方向転換したせいで脚を負傷しており、踏ん張りが効かなかったのだろう。
『
間髪入れずムスケルに突っ込み追撃を入れる。
―――スパァァンッ
ガードが間に合わないムスケルの顎に光速の蹴りを入れる。
「む、おぉ……」
流石の筋肉ダルマも脳震盪には抗えず、意識を失い、地に伏した。
「「「……」」」
闘技場を静寂が支配する。
「あのー…… 試合はこれでおしまい、ですよね?」
「あー、ごほん。勝者、シリウス!」
ディアッカ教官が手元の魔石に魔力を込めると、シリウスとムスケルが闘技場の外に転移させられた。
「むう…… 気を失っていたであるか……」
「大丈夫ですか?」
闘技場から出てすぐに覚醒したムスケルに手を差し出す。
ムスケルは薄らと笑みを浮かべてその手を取った。
「シリウス殿、楽しかったですぞ! まさか我の全力を正面から受け止めてくれる者がいるとは思っておりませんでした。我もより一層筋肉を高めていく所存、またお手合わせ願いますぞ!」
「ムスケルさん、ありがとうございました。次も負けませんよ!」
シリウスの手を取り立ち上がったムスケルと、そのまま固く握手を交わした。
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