第3話 スキル
目が覚めた。
ここは会社…… ではなく、ベッドの中。
隣には美女が寝ている。
違う、そうじゃない。
母親だ。
「------」
母は僕をなでながら、おもむろに胸をはだけさせた。
「んぐっんぐっ」
ハッ!? なぜ!?
気づいたら授乳されていた。何を言っているのか分からないと思うが、僕も何が起きたのか分からなかった。
いや、限界に近い空腹を感じていたせいか、体が無意識に食事を求めていたようだ。
25歳の男が授乳されている…… と思うと本来恥ずかしくなって然るべきなのだけど、何故か羞恥心はない。ただの食事としか感じない。
精神が体に引っ張られているのかも知れない。
まぁ食事の度に羞恥心を感じなくて済むから、ある意味楽でいいかもしれない。
「------!!」
今、隣で嬉しそうな顔で語りかけてきている男性は、父親だと思われる。
シカトも可哀想なので返事をしておく。
「あーうー」
うん、舌がうまく回らない。
産まれていきなり喋る赤ちゃんとか不気味で仕方ないし、これもまぁいいとしよう。
それにしても、転生か……
父と母の話す言語は、どうも地球のものではないと思われる。色々な国のクライアントと仕事をしてきたが、こんな言語は聞いたことがない。
またこの部屋の設備。部屋の調度から貧しさは感じないのに、電気設備や機械がないのだ。
ランプて。
いつの時代ですか?
しかも死ぬ前と寝る前に聞こえてきた声。聞き間違いでなければ、スキルとか魔力とか聞こえた。学生時代によく見ていたアニメやライトノベルの中ではよくある設定だが…… やはりここは異世界なのかもしれない。
今までの記憶を辿ると、どうやら僕は『解析』『操気』『魔力操作』というスキルを所持しているようだ。他にスキルを持っているかは分からないが。
《スキル『洞察』により、対象者の所持スキルを確認しました。
所持スキル:『超耐性』『洞察』『解析』『操気』『魔力操作』》
なん…… だと……
あまりのファンタジーさに目眩が……
いや、それはもう納得しよう。この流れだと、スキルの詳細を確認することも出来るのではないだろうか。
《スキル『解析』により、対象スキルの効果を確認しました。
『超耐性』:パッシブスキル。状態異常などの対象者への悪影響に対する非常に強い耐性。任意で発動を停止することが可能
『洞察』:アクティブスキル。対象者の状態や能力を見抜く
『解析』:アクティブスキル。対象物の構成要素や詳細を解析する
『操気』:パッシブスキル。気力の感知、操作を行う
『魔力操作』:パッシブスキル。魔力の感知、操作を行う》
『超耐性』と『洞察』なるスキルも知らぬ間に獲得していたようだ。
そしてやはり一番気になっているスキル…… 『魔力操作』だ。
前世には『気』というものは存在していた。
勿論かめ〇め波とか、そんなファンタジーなものではない。武術において攻撃を放つ時、受ける時、腹に力を込めて瞬間的に力を少しだけ高める程度だ。
学生時代に近所の道場で少しだけ武術をかじった程度だが、その存在は微弱ではあるが感じ取ることが出来た。
しかし『魔法』は違う、完全にファンタジーの世界だ。
いや、前世にも存在していたのかもしれないが、僕は接する機会がなかったし、そんなオカルトありえないとすら思っていた。
しかしこの世界には『魔法』があるという。
年甲斐もなくワクワクする。是非使ってみたい。
母親が近くを離れた隙を見計らい、早速僕は体内にある魔力を感じ取ろうと集中し始めた。
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