第63話 幼児化

「「「―――うぇぇぇーーん!!えーーん!えーーん!!えぇーーん!!」」」

Cクラスの教室が託児所みたいに、子供の泣く声で響き渡っている。


「―――先生~!!ごめんなさ~い!元に戻して~!!」

「もう二度とせーへんから~!!」

「ズビ・・・ズビ・・・ズビバベンベビダーー!!」

3才児ぐらいの姿になった。ヒマワリ、エトム、ヨミの3人がコドナ先生に抱き着きながら懇願する。


「お前ら、いつまでも泣き喚めいてんじゃ・・・―――って、オイ!ヨミ!!顔を押し付けるな!!鼻水が付くだろうがーー!!」


・・・何故、俺達が

触れたモノを若返らせる異能力者!

コドナ先生の幼児化の異能力によって子供の頃の姿に変えられ、こんなカオスな状況に陥ったのかというと・・・



―数分前のCクラスの教室―


「お前ら、わかってんのか?もう文化祭まで時間ねーんだぞ!!出し物を決めてないのは、俺のクラスだけじゃねーか!!いつまでもA・Bクラスの連中に舐められてて良いのか?」

教壇の前に立ち、生徒達にチンピラ口調で檄を飛ばす、どっからどう見ても子供にしか見えない、この人が・・・


―――Cクラスの担任、コドナ先生である!!


Cクラスというのは・・・

A・Bクラスのある校舎から遠く離れた山奥に今は、使われていない旧校舎の中にあり。そこに、この学園で教師達に見放された落ちこぼれの生徒や不良生徒などが集められた最底辺のクラス!


―――だが!

その実態は、男しか学問を学べないという、この世界のルールに反旗を翻した。女の子達が男装してまで教育を受けに集まる女の子のみのクラスなのだ!!


「何もやりたいことがねーなら、俺が案を出してやるよ!命を賭けたバトルロワイヤルか人生を賭けたコイントス大会!・・・どっちにする?」


もう一度、言おう!

この人が先生なのだと!!


「だ~か~ら~!ヒマワリの所為で俺達、廊下に立たされたんだろ?」

「は~?あたし!?何であたしの所為なのよーー!!」

引野とヒマワリの廊下で言い争う声がCクラスの教室中に響き渡る。


「ヒマワリが校外のお土産をクラスのみんなに配ったのがコドナ先生にバレて、幼児化こんな姿にされたんだろうが!!」

「だってしょうがないじゃん!買って帰るってみんなと約束したんだから!!」

・・・こ、こいつ

悪びれる素振りも見せない!


「・・・お前 異能力は、あんなに応用が効くのに、お前自身は、全然応用が効かねーな!!」

「―――うわぁーー!!引野が言っちゃいけないこと言ったぁーー!!」

ヒマワリが引野に取っ組み掛かるのをエトムとヨミが宥める


「・・・ったく!一刻も早く出し物を決めなきゃならねーのに・・・―――ガタガタ喚いてんじゃねーよ!!」


「「「―――ぎゃぁぁぁーーー!!!」」」

教室内からコドナ先生の怒鳴り声が聞こえた途端、Cクラスの教室の壁が大破して、廊下にいた引野達が悲鳴を上げる


「・・・な、なな、何するんだよ!コドナ先生!!危ないじゃないか!?」

「・・・あ?俺がっていう証拠でもあんのか?」

「―――今、自白したじゃん!」

いくら古びた旧校舎の壁だからって殴って壊すなんて、凄い破壊力だな!!


「お前ら反省してんのか?俺が何で廊下に立たせたのか、わかってんのか?」

「・・・て、停学中に・・・校外へ・・・出たからです」

睨み付けてくるコドナ先生に怯えながら答える


「―――違う!他校の生徒とケンカしたからだろうが・・・!!」

「・・・いっ!―――いだだだーーー!!・・・あ、あ、頭がーー!!」

幼児体型のコドナ先生の細い右腕が太くて大きな、逞しい腕になり、引野の頭を鷲掴みにする。


「―――痛い痛い痛い痛いーー!!わ、割れる!割れる!!割れるーー!!」

「お前らの所為でトキド・ケーは、今、他校の教師達に頭を下げに行ってんだぞー!!」

普段のコドナ先生は、幼児化の異能力を自分の身体に掛けて、幼い児童のような姿をして過ごしているが・・・

少しでも苛ついたり、頭に血が昇ったりすると幼児化の異能力を一部解除させて、本来のコドナ先生の姿に戻って暴力を振るってくる。


―――問題のある暴力教師だ!!


今日は、トキド・ケーが教室にいないので、周りの目など、一切気にすることなく、異能力を発動している。


「いいか?お前ら!次、騒ぎを起こしたらしたら、こうなるからな!覚えておけ!!」


・・・ひ、人を教訓に使うな!!


「反省しろよ!・・・―――ったく!本当、羨ましいことしやがって!!」

「・・・う、うう~・・・すいませんで・・・―――ん?今、なんて!」

引野の頭から手を離すと、コドナ先生の右腕が元の幼児体型の細い腕へと戻っていく


「―――で!どうすんだよ?お前らが校外で遊び倒してた所為で未だに、このクラスは、何も決まってねーんだぞ?」

「・・・そ、それなら!俺が飛びっきり盛り上がる出し物を考えてあります!!」


「ほ~ 俺の案より自信があるんだな?言ってみろ!」


「―――女装カフェです!!」


「「「―――はぁぁぁーーー!!?」」」

クラス全員が大声を上げる


「バカか?お前は!一体、何考えてんだよ!!」

「そんなことしたら、女の私達の正体がバレるだろうが!!」

「文化祭には、一般の人も来るんだぞ!!」

引野の提案に非難殺到する


「お前らこそ、何言ってんだよ!普段の男装がバレてないんだから、女の子の姿に戻っても、みんな女の子だったのか!?って思われる心配は、ないだろ?」


「「「―――っ!!!」」」

引野の発言にクラス全員が衝撃を受ける


「文化祭に出るのは、女の子の夢なんだろ?ならその夢は、女の子の姿で叶えようぜ!男が女装してるってなれば、文化祭も盛り上がって夢も叶って最高だろ?」


みんなの夢を叶えるのは、これが最初で最後のチャンスかもしれないんだ!

なら、何がなんでも叶えさせてやりたい!!


「なー!コドナ先生!!良いだろ?」

「・・・ん~?・・・・・・女装カフェか~」

コドナ先生が腕を組ながら真剣に考えている


・・・やっぱり

先生側からしたら、全校生徒どころか全世界の人達の前で女の子の姿に戻るようなリスクある行為は、反対か!?


「・・・う~ん・・・カフェな~!」

「―――いや、そっち!?そこは、喫茶でも何でも良いから!普通、女装の部分に引っ掛かるだろ!!」

珍しく悩んでいると思えばしょうもない!


「お前らがやりたいならそれで良いか!・・・よーし、お前ら!文化祭に向けて女装カフェの準備開始だ!!」


「「「―――おおぉぉぉーーー!!!」」」


こうして引野達も文化祭への準備を開始する。


・・・で

俺達は、いつ元の姿に戻してくれるの?

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