第150話 秘密の打ち合わせ

聖騎士団のギルドルームを出たベルラインは、人気が少ない場所で

個人トークを始めた。


「パルちゃん、ちょっといいかな?」


「うん、大丈夫よ。こっち来れば?最近来てないよね?」


「ま、まあ。色々忙しくて。」


「ベルニウム補給し隊とか?」


「そんな感じ。」


「で、今日は何?」


「今度のレイドボス討伐の話は、知ってるよね。」


「ええ。」


「その事で、一度釣り仙人と話がしたいんだけど。」


「タイマーさんと?」


「そう。」


「多分、今なら呼び出せると思うけど、うちのギルドルームでいい?」


「出来れば、闘技場で二人で話したいんだけど。」


「二人っきりねえ・・・あまりお勧め出来ないわ。」


「そ、そうなの?」


「天性の女ったらしだからね。二人きりだと危険よ。」


「ま、まあ私は強いから、大丈夫かと・・・。」


「そこまで言うなら・・・。連絡とってみるわ。」


「ありがとう。」


パルコがタイマーとメールで連絡をとり、闘技場でベルラインとタイマーが会う事になった。

もちろん、その時にパルコがタイマーに釘を散々刺したのは言うまでもない。



闘技場のシークレットスペースで、待っていたベルラインは、タイマーが、現れると丁寧かつ、威厳をもって挨拶をした。


「始めまして、聖騎士団副団長のベルラインと言います。」


丁寧な挨拶に、丁寧な挨拶で返そうとしたタイマーだったが、挨拶を思いとどまりベルラインを凝視した。


「あれ?ゲームやってたの?・・・。」


リアルネームを呼ぼうとした瞬間、ベルラインはタイマーの胸ぐらをつかみ、吊し上げた。


「始めまして!聖騎士団副団長のベルラインです。」


始めましてをことさら強調し、再び挨拶をするベルライン。


「は、はじめまして・・・。」


吊し上げられたまま、タイマーは挨拶を返した。

ベルラインが胸ぐらから手を放すと、タイマーは下に座り込んだ。


「酷いなベルちゃん。」


「誰が、ベルちゃんだっ!」


「いや、だって名前長いし。」


「私をベルちゃんて呼んでいいのは、女性だけだっ!」


「それにしても、ベルラインねえ。」


「おいっ、人の話を・・・。」


「随分、安直に名前つけたんだね。」


「き、貴様に言われたくないわっ!」


「ああ・・・、まあそうだね。でもその名前で誰も気が付かないの?」


「私を知ってるのは、貴様と先生だけだ。」


「グランマさんも知ってるんだ。」


「先生は、仕方ないとしてだ。何故貴様は、簡単に人を見抜けるっ!」


「普段から、相手の仕草とかちゃんと見てるからだと思うけど?」


「普通、そんなもの気にしないだろ。」


「でも、俺とこうして二人きりで会うってことは、バレるかもって思った?」


「ふんっ。」


ベルラインは、ぷいっと顔を反らした。


「で、ベルちゃんの要件は?」


「だから・・・。」


はあと諦めたようにため息をついた。


「レイドボス討伐が行われるのは知ってるな。」


「オオカミウオでしょ?まあ釣るのは俺だから知ってるけど。」


「残念ながら、そこで貴様と顔を合わすことになる。」


「何故に残念なの?」


「当初は参加するつもりはなかったが、どうもそう言っていられない状況になってしまった・・・。」


「大変だね、副団長って。」


「そこでだ。私と会っても親しく声を掛けない様に。」


「ああ、そういう事ね。まあ俺も余裕ないからねえ。」


「何がだ?」


「釣りだよ。今でさえ1時間に1回釣れるかどうかだから。」


「一体、VFGXは、何のゲームなんだ・・・。」


「俺は、凄く楽しいけどね。」


「働きもせず、ゲームで釣りとはいい身分だな。」


「それを言われると・・・。」


「まあいい、貴様は釣りに集中して、私に声を掛けなければそれでいい。」


「むしろ、頑張ってって声を掛けて貰いたいんだけど・・・。」


「貴様に声を掛ける義理はない。」


「義理くらいあると思うんだけどなあ・・・。」


「うるさいっ!とにかく、馴れ馴れしくしないで貰いたい。私にはゲーム内での立場があるからな。」


「ベルちゃんも色々大変だなあ。」


「いいか、馴れ馴れしくするなよっ!」


そう捨て台詞を残して、ベルラインは去っていった。

タイマーも既にこの日の釣り時間は終わってる為、パルコに話し合いは終わったと伝えてからログアウトした。

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