第147話 日々精進

「へえ~、ここが鋼の翼のギルドルームなんだ。」


ローラは、ギルドルーム内を見渡した。


「それにしても、パルコさんがよくゲストキーくれたわよね。」


「やっぱり、パルコさんと何かあるのか?ローラ。」


タイマーは聞いてみた。


「何かあるって訳じゃあないけどね。向こうは何とも思ってないと

 思うけど?」


「うん、パルコさんは何とも思ってないと言ってたよ。」


「でしょうね。」


タイマーは空気を読み取って、これ以上追及する事は無かった。


「それより、何の呼び出しなの?ヨンペイ君も居るみたいだけど。」


「今からの話は、他言無用でお願いしたいんだが、いいかな?」


「いいわよ。」


「先日、オオカミウオを釣り上げてね。」


「何なの、その魚?」


「釣り堀でしか釣れない魚だよ。」


「えっ!釣れたの?」


「補足させて貰うと、レイドボスらしいですよ。」


ヨンペイが付け加えた。


「えっ?釣った魚がレイドボスなの?」


「釣り上げたんだが、攻撃を受けてね。その時ギルドルームに居た

 メンバー全員死亡したよ。」


「・・・。」


「現状、師匠しか釣れませんので、極秘扱いという事になってます。」


「どうして、ヨンペイ君は既に知ってるのよ?」


「自分は連合から聞きました。」


「ふーん。」


「でだ、釣ったのがばれると色々面倒なことになるらしいんで、当面は

 ここで練習する事にした。」


「でしょうね。レイドボスが現状一人しか釣れなかったら大騒ぎよ。」


「そこで、二人にも頑張って欲しいなと・・・。」


「私、まだ当たりがわからないんだけど?」


「それは自分も・・・。」


ローラとヨンペイは、未だライン当たりが判らなかった。


「結論から言うとライン当たりがわかっても、手遅れなんだけどね。」


「「えっ・・・。」」


「ライン当たりが出る前に先合わせする感じなんだけど。」


「何その超能力的なのは・・・。」


ローラが呆れた。


「前当たり的な物はないんですか?」


「ないね。」


「・・・。」


「適当に合わせ入れたら釣れるんじゃないの?」


「それは無理かと。最初の方に何人もが試してるし。」


全然釣れなかった最初の頃、何人かの人間が適当に合わせをいれて、

長時間頑張ったが、誰一人釣る事は無かった。


「運営の釣り担当って頭おかしいんじゃないの?」


「ここまで来ると異常ですね。」


ローラのお怒りに、ヨンペイも同意した。


「自分の経験則からいって、まずはライン当たりが判るのが、必要だと

 思う。二人には、まずはそれを練習してほしい。」


「千里の道も一歩からでしょ?釣れないのは悔しいからやるけど。」


「自分も頑張ります。」


それから三人の過酷な練習が始まった。

過酷とは言っても、動きがあるものではなく、三人とも座って、じーっと

釣り糸を眺めつづけた。

タイマーは、ローラとヨンペイに当たりを教えるため、次第に3つのラインを

把握できるようになった。

わずかな当たりを3つ把握するまでに感性が研ぎ澄まされた。


1週間、ローラとヨンペイは極力タイマーに付き合った。

タイマーは朝2時間と夜の2時間の2回に練習を分けた。


1週間で、ローラとヨンペイは、当たりかも?というレベルまで、

達する事が出来た。

タイマーは、この1週間、一度も合わせを入れていない。

あの感覚を、ものにはできていないが、研ぎ澄まされた感性が段々と

近づいているのを体感していた。

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