第144話 上手に釣れました~

その日、時野正は、バイトで2件の引っ越しが入ったため、

アパートに帰るとクタクタだった。

今日は、もうゲームにONしなくていいかなとも考えたが、

当たりを見る目は、毎日の積み重ねが重要なので、とりあえずONした。

ギルドルームでは、パルコ、ミラ、クレインの3人が、いつものように

雑談をしていた。

タイマーは、軽く挨拶を済ませ、釣りを始めた。


【そういやあ、取説に疲れた時はゲームをやらないように書いてあったが、

 まあいいか・・・】


疲れながらも糸をジッと見るタイマー。

1時間のうちに当たりは、3回来たが、もちろん掛ける事は出来なかった。


【やべっ、本当に疲れてきた。今日は辞めた方がいいかな?】


と思いつつも。

だんだんフィッシングハイへとなっていった。


タイマーは、大学時代24時間釣行という無謀な挑戦をした事がある。

20時間経過するとボーっとするのだが、23時間を過ぎると一瞬元気になる。

それがフィッシングハイと呼ばれる現象だ。

個人差がある為、釣り業界で活躍してるタフな連中は40時間を超えないと

フィッシングハイにはならないらしい。

そして、稀にだが、フィッシングハイ中にゾーンに入る事がある。


タイマーは疲れたのもあって、目をつぶっていた。

VR機は、寝てしまうと強制落ちするようになってるが。

タイマーは寝たのでは無かった。


【なんか当たりそうっ!】


そう思い、竿をたてフッキングの動作をした。


ぐーーーっ!


強烈な引きが起こった。

しかも、頑丈な物干し竿が弧を描いて曲がっている。


「くっ。」


タイマーはすぐさま立ち上がり、膝の屈伸を使ってやり取りをする。

持っていかれそうな時は、ボタンを押して糸を送る。

今までとは比べ物にならない、やりとりを要求された。


【絶対にとってやる!】


繊細なやりとりを確実にこなし15分経過したが、相手の勢いは止まらない。

タイマーはある程度、予測していた事だ。

20分経過しても、勢いは止まらず、ついに30分が経過した。

魚の勢いが止まった。

タイマーの勝ちが確定した。


【こんなに嬉しいのは何十年ぶりだろう。】


大きい声を出して、喜びを叫びたがったが、ギルドルームではプチ女子会が

開催されてるので、大人しく魚を上げていった。


【何の魚だろうかなあ。】


ワクワクしながら釣り上げると、巨大な魚が出現した。

全長10mもある魚が・・・。

小さい釣り堀一杯の大きさの魚が。



オオカミウオ


凶暴な魚。

何やら機嫌がわるそう・・・。


タイマーは、おろか、パルコ、ミラ、クレインの魚リストにも、表示された。

もちろん、この時は、誰も魚リストは見ていない。


「「「・・・。」」」


突然、巨大な魚が出現し、3人の女性は何も言えなかった。



そして・・・。



オオカミウオは、水のブレスを吐きだした。


タイマー、パルコ、ミラ、クレインは、一撃のもと死亡した。


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