第142話 風が吹けば桶屋が儲かる
タイマーは、テンション釣法を完全に捨てて、テンションを掛けない釣法とゼロテンションの釣りに絞って、毎日4時間ずっと、糸を眺めていた。
名前の通りの物干し竿では竿あたりは取れそうもなく、糸あたりを見極めるべく、日々ボーっと座っていた。
本人はラインに集中してるわけで、ボーっとは座ってないのだが、傍から見るとボーっと座ってるようにしか見えない。
しかし、ずーっとラインを見ていた甲斐あって、タイマーは何かの違いに気が付いた。
それは、本当に、小さなもので、毎日ずーっと眺めていた、タイマーだから気づいたものだった。
その頃、聖騎士団のギルバルトは、デュエル大会の後処理に追われていた。
後処理と言っても、ギルバルトが大会関係者のわけではなく。
グランマへの質問がひっきりなしに、団長であるギルバルトの所へ寄せられた。
その殆どが、というか全部が、「薙刀は、何処で買えるんですか?」だった。
ギルバルトは、グランマから聞いていて、ロッドメーカーが作ったのは、知っていた。
ギルバルトが直接ロッドメーカーに聞いた所、作成者は言わないでほしいとの事だった。
と言う訳で、ギルバルトは、作成者は引退したと、一つ一つに答えていた。
こういう大会や、何か目立つことがあると、直ぐに飛びつく輩が多い。
殆どが一過性のものなので、時間が経つと収まるのだが。
矢面に立ってるギルバルトは、たまったもんじゃない。
実際に、NPC売りの薙刀で試した輩も居たようだが、自分にはあってないと諦めるのが殆どだが、中には、NPC製品は自分にあってないとわけわからない輩もいる。
昔からネットゲームには、そういう自己中が多いのだが、それはVR機になっても変わる事はなかった。
しかし、ここで一つ不思議な事がある。
連戦連勝中のカンピオーネことカラットだが、あれだけ目立っても、魔拳士を目指そうとする輩が居ない。
魔拳士が居ないわけではないが、にわかというか、ブームに飛びつくと言うか、そういう輩が一切出てこない。
ギルバルトもしつこい自己中な連中には、カラットの名前を出しているのだが。
「薙刀の作成者は、今は引退しています。NPC製品でまずは腕を磨いたら、どうですか?」
「俺はよぉ、NPC製品じゃあ実力が出せないわけよ。だから作成者ってのを教えてくれれば、あとはこっちで何とかするから。」
「お教えする事は、できません。」
「あのなあギルバルトさん、あれだけ強いのは、あの武器のお蔭だ。見る奴が見ればわかるんだよ。ギルドで隠すのはよくないんじゃないのか?」
「強いと言われますが、カラットには敵わないでしょう?」
「そりゃあそうだろ。」
「じゃあ魔拳士を目指したらどうです?」
「俺は自分をわかってるつもりだ。あんな真似は出来ねえよ。」
こういう輩が、後を絶たない。
「とにかく、教える事は出来ませんので。」
「ああ、そうかい、それならグランマさんってのに直接聞くからいいやっ!」
話し合いが終わると、ギルバルトは運営に即座に報告した。
こういう輩は、運営がいちいち動くとは思ってなく、常に上から目線で、接してくる。
ゴキブリみたいなもので、居なくなる事は無い。
後日、運営から、これ以上の行為はアカウント停止処分に該当しますとメールが来ると、涙目になってメールの返事を返すのだった。
【すみません。すみません。大人しくしますから、アカウントだけは。】
人生をゲームに掛けてる奴は、アカウント停止や削除されるのが一番怖いらしい。
こういう騒動と言うのは1か月以上続くものだが、1週間で終わった。
騒動は、金になると誰かが言ったように、何人かの槍職人が、1週間で、R3の薙刀を作れるようにしたのだ。もちろんブームが終わったら消すつもりで。
通常の3倍価格の値段で売り出した、薙刀だが、飛ぶように売れた。
もう、笑いが止まりません、うっひゃーーーっと槍職人は、ウハウハだった。
手元に行きわたれば、皆、現実を知るもので、殆どの人間が、諦めた。
結局、ブームは1週間で終わったのだが、槍職人たちは、商売人である。
その辺は見越して、在庫0で売り切った。
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