第123話 ただいまの記録は

「ヨンペイさん、どんな感じ?」


タイマーが釣りをしてるヨンペイに話しかけた。


「師匠、まだかなり厳しい状況ですが、シマアジ23匹になりました。」


「いい感じじゃないかな?」


「といっても、たまたま2と3層の間に入った時に釣れるくらいで。」


ヨンペイは、何度も何度もトライしてる時に、偶々、2と3の中間を感じる時がある。その時にラインを送り込んで釣ってるわけだが、効率は良くはない。


「4層は、もう大丈夫?」


「相変わらず、層があるかないかは、わかりませんが、層がある時なら、何とか釣る事は出来ます。」


「ふむ、ローラと並んだ感じだね。ヨンペイさんは、シマアジが狙いなので、偶々でもいいから、これからは只管、2と3の中間を狙うのがいいね。」


「はい、そのつもりです。」


「この感じるのだけは、何とも教えにくいんで、体感して判って貰うしかないね。」


「はい。頑張ります。」


「じゃあ、俺はカツオの記録更新でも頑張るかな。」


「し、師匠・・・。それ俺の記録なんですが・・・。」


「うん。下から頑張ろうかなと。」


「全部、更新するおつもりで?」


「出来るとこまでだけど。」


カツオ、シイラ、ブリなどは、ブリ祭りが港であった為に、港で釣ってた人間が記録保持者となっている。

ヨンペイも何種か記録を持ってるが、タイマーは、全部更新していく気、満々だった。

ヨンペイとしては、ぶっちゃけタイマーに全99匹をやって欲しかったのだが、いかんせん5層が、いつもあるわけでなく、アンコウとキンメを99匹釣るより、ヨンペイが、シマアジを釣る方が速そうだった。

まあタイマーが港に行けばいいだけなのだが。


ヨンペイは、ふと気になったので、川の2層の魚を調べてみた。

すると、2層の魚の最長記録は、全てタイマーの名前になっていた。

もちろん、シマアジもタイマーの名前となっている。


少し、離れたところで、鮒を釣ってる人が居る。

既にタイマーに記録を抜かされており、それでも諦めずに頑張っていた。

ただ、タイマーのように当たり等で釣り分けられるもんじゃないので、効率は、悪かった。


タイマーは、川の3層で、カツオとシイラとブリを釣り上げた。


「ふむ、まだ完全には、釣りわけれないか。」


まずは、当たりで魚種を釣りわけ、その後、最初の引きで大きさを釣りわける。

合わせてしまえば、その後、バラすと餌も無くなる。

つまり、合わせる前に釣りわけるという高等テクニックだった。


タイマーは、大学生の頃、アジングに嵌っていた。いやアジングにもだが。

アジングに於いて、鯵だけ釣れれば何の問題もないのだが、違う魚種も釣れてしまう。

多いのは、メバルとカサゴ。

アジングでは、非常に細いラインを使う為、どの魚が掛かったかで、対応を変えなければいけない。

鯵の場合は、元より鯵を釣る為のタックルなので、何の問題もないが、問題は、メバルとカサゴだった。

カサゴの場合は、一気に根に潜られる。

アジングタックルでは、どうしようもないサイズの場合は、どうしようもないが、とにかく根に潜られれないようにしなければならない。

ようは、ラインブレイクしないように一気に引き上げる訳だ。

が、メバルの場合は、また対応が違ってくる。

小物なら問題は、ないが、大物メバルの場合は、一気にテンションを緩める。

カサゴと全く逆の事をしなければならない。

メバルの場合は、テンションを抜いて、釣られてるという事を気づかれない様にゆっくりと引いてやれば、何と素直に寄ってくるのだ。


上記のようにメバルとカサゴは、まったくの逆の対応をしなければならない。

瞬時に、どちらかを察知するのは、不可能に近かったが。

タイマーこと、時野正は、大学時代にそれを可能にした。


そんな時野だからこそ、3層の魚も釣りわけれる自信があった。

さすがに、この日直ぐには無理だが、何日かすれば。


しかし、シマアジを地道に釣ってる弟子の横で、カツオだシイラだブリだと釣り上げてるタイマーは、鬼神のようだった。

ヨンペイもまったく気にならないと言えば嘘になるが。

まあ、弟子なんで・・・。



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