第99話 嵐の前の

「これでようやくレベル20ですね。」


グランマは、レベル20に到達した。

毎晩、聖騎士団の面々にミミズ狩りを手伝って貰い、1週間で、達成する事が出来た。

そうして、備州長船静型を装備した。


「うん、しっくりきますね。」


ようやく装備出来た、PC製品に喜びひとしおだった。


「先生、装備も変えた方が良くないですか?」


カルディナが言った。


「そうだな、グランマさん。装備を買いに行きましょう。」


ギルバルトが言った。

本日の壁役は、この二人だった。

ベルラインも極力協力はしていたが、ベルニウム補給し隊等あって、この日のミミズ狩りには参加していなかった。


「薙刀は、槍術師になるんで、軽装備になります。」


ギルバルトが説明する。


「ええ、出来れば動きやすい物がいいわね。」


「とりあえず、知り合いの所へ行きましょう。」


3人は、ギルバルトの知り合いの所へと向かった。


「R3の軽装備はあるか?」


ギルバルトは知り合いの生産職の人間に声を掛けた。


「聖騎士団が、俺に何の用かと思えば・・・。」


軽装備専門の職人だった。

軽装備は裁縫系で、重装備は鍛冶系と別れている為、両方作るには、色々とスキルの問題があり、片方だけという人が多かった。


「うちの新人のグランマさんがレベル20になってな。」


ギルバルトは、そう言ってグランマを紹介した。


「グランマと言います。宜しくお願いします。」


見た目は、40前後で、清楚なキャラであり、あまり見かける事は少ない。

大体、女性キャラを作る場合で、ここまで高年齢の設定にする人は、殆ど居ない。

ごくわずかにネタキャラで、婆さんキャラを作ってる人も居るが。


「う、美しい・・・。」


職人にとっては、どストライクだった。


「あら、まあ嬉しいわ。」


「す、すみません。いきなり。それにしても薙刀なんて、あったんですね。」


「団長、このおっさん、熟女好きですよ?」


カルディナが言う。


「ほっておいてやれ・・・。」


「うっさい。古風な日本女性って意味の美しいだ。下種の勘繰りすんじゃねえ。」


「へ~。」


何言ってんだコイツみたいな目でカルディナは職人を見た。


「グランマさんは、薙刀使いで槍術師だ。着れる防具はあるか?」


「それなら、これかな。」


そう言って、職人は水晶の軽鎧を出して見せた。



水晶の軽鎧(槍)


水晶の力で、スピードのマイナスを軽減している。

軽鎧の為に、防御力は少ない。



「槍術師用なんだが、まったく売れなくてな。」


「槍術師なら、普通道着のような防具じゃないのか?」


「おっしゃる通りで。」


「これにします。」


グランマが言った。


「えっ、グランマさん、ちゃんとしたのもあるはずですよ。」


ギルバルトが言う。


「毎度あり~。お客さんいい買い物したねえ~。」


「ちょ、おまっ、売れ残り売ろうとしてるだろ。」


「いいじゃねえか、R3だろ?30になったら直ぐNPC売りされるんだろ?」


「まあ、それはそうだが・・・。グランマさん本当にこれでいいんですか?」


「ええ。誤解してる人が多いけど、本来薙刀は、鎧を着て使う物なのよ。戦場で使う物だから。」


どうやら、本気で気に入ってるようだった。


「お客さん、お目が高いねえ。是非R4がご入り用になったら、また。」


「ええ、その時はお願いするわ。」


「いつから軽鎧作るようになったんだ?軽鎧は、鍛冶系のスキルも使うだろ。」


ギルバルトが聞いた。


「裁縫だけじゃあ、生きていけないのよ。という事で3000ゴールドだ。」


そう言って、ギルバルトに手を出した。

売れ残りだから、値切ろうと考えていたギルバルトだが。


「水晶使ってるのに、安いんだな?」


「売れ残りだからな。」


「いいのか?」


「ああ。その変わりR4の時は、必ず来てくれ。」


「わかった。」


ギルバルトは3000ゴールドを支払った。

グランマは、水晶の軽鎧を装備し、ご満悦な表情だった。


「ありがとうございます。レベル上げから装備まで。」


「いえ、ギルメンの面倒を見るのは当然ですから。」


「これで、クレインに勝つことが出来ます。」


「「えっ。」」


グランマのとんでも発言が飛び出し、ギルバルトとカルディナは驚いた。

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