第75話 魔女の集い

「ねえねえ、今日さあ、ヨルムンガンドで女子会あるけど行ってみる?」


「どうしようかっな~。」

聖騎士団のギルドルームで、二人の女子団員が話をしていた。


「行く、行く~♪」

背後からカルディナが返事をした。


「「げっ」」


すぐさま、誘った方が、ギルドルーム内を見渡す。

しかし、団長も副団長も居なかった。


「や、やっぱさ、他のギルドの集まりだから、やめといた方がいいんじゃない?」

誘われたほうが答えた。


「そ、そうね。」


「えー、そんな事言わずに、皆で行こうよ~。」

全然引き下がりそうにないカルディナ。


「じゃあ、ヨルムンガンドの人に聞いてみますから、それで駄目だったら諦めてくれます?」


「うんうん。」

カルディナはニッコリと微笑んだ。



「あのう、今日の女子会なんですけど。」

ヨルムンガンドのGMミズガルドに個人トークをした。


「何?」


「そっちから無理と断ってくれませんか?」


「へ?」


「実はうちの問題児に聞かれちゃって。」


「あら、聖騎士団に問題児なんて居たの?」


「居るんですよ。それもガチなのが・・・。」


「それは面白そうね。是非連れて来て。」


「マジで言ってます?ガチなんですよ?」


「幸い、今日はターヤ居ないから大丈夫よ。」


「私達、責任もてませんよ?」


「いいわよ。面倒は、私が見るから。」




「ねえ、なんてなんて?」

カルディナが聞いてきた。


「是非連れて来てって・・・。」


「ちょっと、まずいんじゃないの?」

誘われていた人間が不安になった。


「責任は、ミズガルドさんがとるって。」


「そうなんだ・・・。」


「いやっほーーーいっ。 女子会だ~。」

カルディナは大喜びした。



魔術結社ヨルムンガンドの中には、大勢の女性が居た。

その殆どが、魔女のマントに、魔女の帽子を被っていた。

魔女の集いと言われる所以である。


「初めまして、GMのミズガルドです。」

ミズガルドが、丁寧に挨拶をした。


「聖騎士団のカルディナです。」

見つめ合う二人。


「へえ、本当にガチなんだ。」


「そっちは、半レズみたいね。」


見つめ合うだけで、わかりあった二人。

半レズとは、半分レズというわけでなく、中途半端なレズの略で、緩い百合とも言われ、人口は、物凄く多い。


「とりあえず、カルディナ、あんたは私の傍に居なさい。」


「あら、いきなり呼び捨てで命令って、何様?」


「このギルドのGM様よ?それぐらい当然でしょ?」


カルディナは、追い出されたくなかったので、渋々従った。


「それにしても、あんたみたいなのが聖騎士団に居たとはねえ。」


カルディナは、ヘラ顔で、当たりを見回していた。

あっちを見ても女性、こっちを見ても女性。

カルディナにとってのパラダイスがここにあった。


「ん?」


「締まりのない顔になってるわよ・・・。」


「こんなパラダイスを作ってるなんて、ミズたん、中々やるわね。」


「誰が、ミズたんよ・・・。」


「名前長いのよっ。」


「まあいいけど。あなたみたいなのがベル様の近くに居ると思うと恐ろしいわね。」


「むっ!あんたベルファン?ベルサラ?」


「ベルファンだけど?」


「そう。」


「そういうあなたは、聖騎士団に居る位だからベルファンなんでしょ?」


「どっちかというなら、ベルサラよ。」


「えっ!!!」


「だってさあ、あの二人の究極の一枚出回ったでしょ?」


「まあ、私も持ってるけど・・・。」


「あれ見て、間に挟まれたいっ!って思うでしょ普通?」


「思わねーよっ!」

唐突な言葉に、思わず思いっきり突っ込んだミズガルド。


「あんた、本当に腐ってるわね?中身男なんじゃないの?」


「失礼ねえ、レディに向かって、そんな事言うなんて。」

初対面では、あったが、何故か馬が合った二人。



「あら、随分楽しそうね?ミズガルド。」

ヨルムンガンドの副GMターヤが登場した。


「タ、タタッタタタ、ターヤ、どうしたの?」


「ミズガルドの方こそ、どうしたの?私の名前、そんなに長くないわよ?」

冷汗ダラダラで、焦りまくるミズガルド。


「ちょっとミズたん大丈夫?汗ダラダラよ?」


「わ、悪い事は言わん。今すぐログアウトしろ。」


「へ?」


「あなた、見ない顔ですね。初めまして副GMのターヤと申します。」


その鋭い眼光に、超女好きのカルディナが固まった。

蛇に睨まれた蛙のように・・・。

カルディナは、理解した。

そこに居たのは、歴戦を潜り抜けた主婦であることを。

人生経験の豊富なタイマーならいざ知らず、所詮は女子大生。

歴戦を潜り抜けた主婦には敵うはずもなかった。


「お名前、教えて頂けるかしら?」


「せ、聖騎士団のカルディナです。」


「新人さんかしら?」


「いえ、結構前から・・・。」


「へえ?ギルバルトさんも、ベルラインさんも、とんだ隠し玉を持ってたのねえ。」


【めっちゃ怖いんだけど?】

個人トークで、隣のミズガルドに囁くカルディナ。


【だから、ログアウトしろと言ったろ】


【あんたGM様なんでしょ?なんとかしてよ。】


【無理・・・】


【GMの方が偉いんでしょ?】


【むしろ、そういうギルドが何処にあるか教えて欲しいけど?】


カルディナは、自分のギルドを思い浮かべた。


【・・・。】


「見た感じで悪いんだけど、違ったら御免なさいね。」


「はい?」


「あなたガチな人よね?」


「え、ええ・・・。」


「みなさーん、カルディナさんはガチな人だから気を付けてくださいね。」

ギルドルーム内全員に聞こえるようにターヤは忠告した。


「大丈夫です。女子高の時、居ました。」


「職場に居たことがあります。」


「バイト先に居ました。」


魔女たちが、対応は問題なしと、返事をする。

女性しかいないギルドは、遠慮が無かった。


「もし、ガチに対する対応がわからない人は、私に言ってくださいね。」


「「「は~い。」」」


「カルディナさん、一つだけ忠告いいかしら?」


「は、はい・・・。」


「うちは、魔女の集まりだから、半腐りの人も多いから大丈夫だけど、教会へ行くのは辞めといた方がいいわ。」


「は、はあ・・・。」


「教会には、ルビアさんっていう、とっても怖いお姉さんが居るから、気を付けてね。」


そう忠告はされたものの、カルディナは、ターヤが怖かった。



会議とかいうわけでなく、女子が集まって喋るだけの女子会なので、

内容は、ゲームとはまったく関係なかった。


「もう来ることはないから。」

カルディナはゲッソリした顔で、ミズガルドに言った。


「まあまあ、はいゲストキーあげるから。」


「いや、貰っても来ないし・・・。」


「ちゃんとターヤが居ない時、教えてあげるから。」


「うーむ・・・。」


おざなりな対応はされるものの、目の保養にはなるので、とりあえず

ゲストキーは、ありがたく貰っておいた。

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