第59話 被害者の会

「今日集まって、貰ったのは他でもない。この馬鹿について議論をしようと思う。」


そう言って、ベルラインは、椅子に括られたカルディナを指さした。

聖騎士団で初の女子会を開催するとの知らせを受け、のこのこと一番乗りでやってきたカルディナは、速攻でお縄になってしまった。


「酷いじゃないですかあ。」


「貴様は、黙ってろ。今回は男性陣には遠慮してもらってるので、我々、女性団員だけだ。思う存分議論してくれ。」


「あの、私が、まだギルドに所属して間もないころなんですけど、カルディナさんは親身になってくれて。」


「そうですよ、私がこんな目に合うのが間違ってます。」

縄に縛られたカルディナが抗議する。


「でも・・・密着というかボディタッチが酷いんです・・・。」


「・・・。」

押し黙るカルディナ。


「私もプライベートナンバー教えてとか、メルアド教えてとかしつこくて・・・。」


「・・・。」


「私、思うんですけど。カルディナさん誰かに似てるなあって、考えてたんですけど・・・。会社のセクハラ上司に似てるんです。」


「それは、私も思った。」


「中身が禿げおやじと変わりません。」


「そうそう。」

次々と相槌があちこちで起こった。


「酷いっ!いたいけな女性に、禿げおやじなんて・・・。」

どうにか抗議するカルディナ。


「中身は、セクハラ親父となんら変わらんな。」


「べ、ベル様まで・・・。」


「皆が苦痛に思ってるようだったら、何らかの対策をこうじようと思ってるのだが?」


「ベルさん、それには及びません。」


「そうですね。」

団員たちが頷く。


「会社のセクハラ親父と思えば、私達慣れっこなんで、今後は各自で対応できます。」


「そうよねえ。カルディナさんはベルさんに次ぐ古株だったから、ちょっと遠慮してたんだけど・・・。」


「セクハラ親父と思えばw」




「ぐがああああ。あんなに親切にしてあげたのに、皆酷いっ!」


「手握る位なら許せるけど、私、胸触られたことあるし。」


「油断してたら、キスしようとしてくるよ。」


「おいっ・・・。」

ジト目で、ベルラインは、カルディナの方を見た。


「・・・。」

何も言えず、黙ってるしかないカルディナ。


「とりあえず皆、プライベートナンバーやメルアド等は、教えない事。」


「「「はいっ」」」


「これは、黒き戦士たちのカザミから、受けた忠告なんだが、彼女は、カルディナのリアル先輩らしい。以前、家にカルディナを泊めた時、寝てるカザミにキスをしてきたそうだ。」


「最低っ!」


「外道ですね。」


「あぶなっ。私もう少しでメルアド教える所だった。」


「しかも舌を入れてきたらしい。」

全員が、口元を手で押さえ、気持ち悪い顔をした。


「さ、さすが、百合姫・・・。」


「本当に腐ってますね・・・。」


「酷いっ!私ばっかり!腐ってるのだったら、もう一人いるでしょっ!」

カルディナが抗議の声をようやくあげた。


「別に腐女姫は、私たちに実害ないし。」


「そうそう。あっちは正当な腐り方だもんね。」


「むしろ王道だし。」


「くっ・・・。」


「じゃあ、いいな。カルディナは、セクハラ親父対応をするという事で。」


「「「はーい。」」」

結論が出た。


「ちょっといいですか?」

一人の女子団員が、手をあげた。


「構わんぞ。」


「百合姫の事じゃないんですが・・・。」


「なんだ?」


「最近、ベルさんが一部団員や、他のギルドの人間を贔屓してるんじゃかいかと・・・。」

雲行きが変わってきた。


「えっ・・・。」


「そういや私、ベルさんと最近出かけた事ない。」


「私も。」


「私もっ!」


「ベルニウムが大幅に不足してますっ!」


「ベルニウムって・・・。」


「私もベルニウムが足りないなあ~。」

にや~っと笑うカルディナ。


「ま、待て皆。ここにいる団員の殆どは、もう中級者以上だろ?私が同行する必要などないと思うが?」


「私たちは、一緒するだけでいいんですっ!」


「そうですっ!」


「こういう女子会も定期的に開いてほしいです。」


「そうよねえ。教会なんかいつも楽しそうだし。」


「わ、わかった・・・。同行については、ローテーションを考えておこう。女子会については、私の独断で決めるわけにはいかないので、定例会議の議題に上げておく。」


「「「よろしくおねがいしまーす。」」」


「ベル様も大変ですねえ~w」

椅子に縛られたまま、ニヤニヤ笑うカルディナ。


「貴様の名前は同行者リストから外しておこう。」


「ひ、酷いっ・・・。」

カルディナにとっては、死刑宣告のようなものだった。

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