第37話 釣りデート
「ローラさん、随分とご機嫌ですね?」
ヨサクがローラに聞いた。
ここは、港町の釣り場。
聖騎士団と野武士の面々も釣りをした場所だ。
今日は、タイマーがカラットに頼まれてセッティングした釣りデートの日。
「わかります?」
「え、ええ。」
「実は、これ貰っちゃったんですよ。」
そう言って、ローラはアイテムボックスから
ブラッククリスタルロッドを取り出して、ヨサクに見せた。
「ああ、問題のロッドですね。」
「問題になってるんですか?」
「アップライスって釣具屋のサイトに公表されたんですが。結構騒ぎになってます。」
「あらら・・・。」
「でも、ローラさんが喜んでくれて嬉しいです。そのロッドの材料は、俺と友人が集めたものでして。」
ヨサクはそう言って、頭をかいた。
「堅松樹とライトカーボンメタルが使われてるんですよね。」
「ええ、最前線の武器を凌駕してます。」
「それは、騒ぎになるかも・・・。」
そう言いながらも、ローラは更にご機嫌だった。
「使わないんですか?」
「ええ、川専用に使うといいって、教えてもらいました。」
「なるほど。」
「ようやく川の4層が掴めてきた所なんで、私もこのロッドに見合うように頑張らないと。」
「今日は、川でもよかったのに?」
「いえいえ、釣りを楽しんでもらうなら海です。」
「そうなんですか?」
「普通に、川で釣ったんじゃあ鯉とフナしか釣れませんから。」
「自分は・・・。」
ローラと一緒なら何処でもいいと言おうとしたが、恥ずかしくて言えなかった。
「このゲームの釣りって本当に楽しいんですよ。」
「結構はまってる人いますよね。」
「ええ。」
「ローラさんは釣りのVRゲームとかは?」
「釣りが目的になっちゃうと、ギスギスしちゃうんで、私はやらないんですよ。」
「場所取りとか?」
「ですね。その点、VFGXなら伸び伸びと楽しめるんで。」
「なるほど。」
「でもまあ、私も結構このゲームやってるんですが、最初の川で全部の魚が釣れるなんて、思ってもなかったです。」
「普通、そうですよね。」
二人は、話をしながら釣りを続けた。
ローラから借りた釣り道具で、釣っているヨサクは、今現在が、至高の一時だった。
【我がゲームライフに、一片の悔い無し】
昇天してしまいそうな勢いだった。
至高の一時を楽しんだヨサクは、夜になってゲンとあった。
「しまらねえ顔しやがって。」
ゲンが言った。
「う、うるせえ。今日は最高の一日なんだよ。」
「ローラさんは、ブラッククリスタルロッド持ってたか?」
「ああ、めちゃくちゃ喜んでたぜ。」
「そりゃそうだろうな。」
「ライトカーボンメタル錬鋼5本だっけ?」
「ああ。」
「まあ、俺はローラさんが喜んでるから、それでいいんだがよ。」
「気楽なもんだな。こっちは組合から素材の問い合わせが、来まくってるっていうのに。」
ゲンが、疲れたように言った。
「今までだって、無視してたろ?」
「まあな。全部無視も出来ねえから、少しは組合に卸すつもりだ。」
「護衛が必要なら、まかせとけ。」
「あほ、カラットに直接頼むわいっ。まあデュエル大会前だからな、終わってから少しずつ掘らあな。」
「そっか、いよいよ大会か。」
「まあ大会で、少しは収まってくれりゃあいいがな。」
「どうかなあ?限定戦って盛り上がりにかけてるからな。」
ヨサクが言うように、デュエル大会の限定戦は、盛り上がりに欠けている。
というのも、元GM(ゲームマスター)のマルスが出ないからだ。
完全にカラットの一人舞台になっていて、対抗馬が居ないのが現状だった。
「俺は応援に行けないが、ヨサクは行くのか?」
「いや、俺も時間的に無理だ。」
「とりあえず、頑張れってメールだけしとくか。」
「そうだな。俺たちが応援しなくても優勝すると思うがな。」
「だな。」
二人は、カラットの優勝を信じて疑わなかった。
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