結局いつも、一方通行

頭野 融

第1話 気怠くない朝なんてない

人は泣いたとき、何かで涙を拭きたがる。しかし、流したままにしておきたい涙もある。そんなことを、いま悟った。

って、別に悲しいことがあったわけでも、何でもないんだからね。

何?大丈夫かって?

大丈夫。慰めなんてもってのほかなんだから。

なぜか、口調がツンデレになっている。

まあ、そんなことはどうでもいい。今は朝で、なぜか涙を流してて感傷的な気分になって、だからそれに浸ってただけで、いつも高校に行く時間の五分前ということは変わらない。

朝ごはんを食べながら、というかパンを口に入れながら、横目でスマホを見る。ニュースをかみ砕いて原形を留めていないものたちを見た後は、SNSとやらを見る。そのあとに掲示板だ。掲示板というほど大々的なものではなく、僕と彼との間で掲示板として利用しているだけだ。

『またこれからの日程でも交換しましょう。手紙がやり取りしやすいかな?』これは昨日の僕の文章だ。返事は、、、「烏目鳥目からすめとりめ」これが彼だ。本名は、塔堂とうどう しずく。まるで物語かと思うほど垢ぬけた名前だ。

『テストが終わり次第手紙、送ります。』更新されている。手紙送りますか、ちゃんとしてるし、うれしい。純粋に手紙が。

そういえば、この掲示板を使っているのは僕たち数人だが、他に存在を知っている人などはいるのだろうか。例えば、家族とか。僕は何も言っていないけれど。ちょっと前に、これ本人の書き込みかな?なんてのもあったし。もし、見られていたら恥ずかしいし、書く内容もだいぶ変わるだろう。

いつのまにか、パンは食べ終わっていたし、左手もスマホの操作を終えていた。ずっと頭の中だけが動いていたということか。スマホには起きた時の4分後の時刻が示されている。ということは、のこり一分じゃないか。段々焦って来た。制服のボタンに文句を言いながら、家を出る。だれもいないけど、行って来ますとは言っておいた。

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