第三篇前半 春と嘘と私
今年は気温が高く桜が散り出すのも早かった。そんな、桜の花が散るなか、高校を卒業する私は誓った。
「私は。もう嘘をつかない」
高校生活二年目にまさかこんなことになるなんて思ってもいなかった。
行きたくもない高校に入学した理由は親に勧められたから。しかし中学の担任の先生にはバレていたようで
「あなたの行きたい高校を選ぶのが将来のためよ」
と言われたが横には母がいたから
「私はここに行きたい」
と嘘をついた。私はずっとこうやって生きてきた。友達にもそう。楽しくなくたって楽しいと笑い、周りの人が正しいと言ったことには違うと思っても正しいと言うようにしていた。
その中で1人の人を私は傷つけた。
その人を私は好きだった。
出会いは小説であるかのような露骨な出会いだった。二年生の春。私と彼は同じ学級委員会だった。しかし、その委員会には中学の時から嫌がらせをしてくる先輩がおり、まさか高校で同じになってしまうなんて思ってもいなかった。しかもその先輩が委員長なんて。
そんな先輩は、ほかの人より私の作業をわざと増やしてくる。一人残って作業をしている時、きっと同じクラスの人だからという感じで手伝ってくれていたんだと思う。しかし、そんな彼の何気ないやさしさに私は好きになってしまっていた。
とある日の委員会。今日も私だけほかの人より作業を増やされていたが彼はその日も手伝ってくれていた。
「いつも手伝ってくれてありがとう。助かるよ」
「そんなことないよ。いつも君だけ人よりやること多いし、同じクラスメイトだからね」
私が少し照れながら会話しているところに委員長が現れた。
「あれ? 僕は彼女にこの作業を頼んだんだよ。君が邪魔しちゃだめだよ」
「邪魔じゃないですよ、先輩。僕は自分の仕事が終わったので手伝っていただけですが」
「余計な事しちゃだめだよ。彼女の仕事を取ったら。手伝いたい気持ちもわかるよ? でも手伝ったら俺がお前のことつぶすからな。わかったら早く帰れ」
彼はいやそうな顔をしつつ 「ごめんね」 と言って帰って行った。そして、委員長が私に声をかけてきた。
「お前から手伝わせてたのか?」
「私から。彼に手伝わせていた」
私は嘘をついた。彼を守るために。正義の嘘のつもりでいた。
「そうなの。彼から自発的なら今回は見過ごしてやろうと思ってたけどお前からやったならつぶそっかな」
私は意味が分からなかった。私から誘ったからしょうがない、となると思っていたのに。
「なんでそうなるんですか! 私は彼を巻き込みたくなかったのに」
私は感情的になって先輩に聞いた。
「なんでかって? お前が嘘をついて、それが失敗したときの悔しそうな顔を見るのが俺は好きなんだよ。ほらその顔。いい顔だなぁ」
私の顔はとてもゆがんだ顔になっていたと思う。それは彼の笑いが示している。
そして私はかっとなり、先輩を殴った。顔面にきついストレートを一発。
「お前もそういうことするんだな。でも、もうあいつに手を出すって今ので確実に決めたよ。明日から楽しく待っててね」
先輩は高らかに笑いながら歩いて行ってしまった。私は嘘で守ろうとして罠にかかってしまたこと。自分がかっとなり先輩を殴ってしまった。絶対にこの二つは私や彼に来る。そう考えると怖かった。
先輩とのやり取りから二週間後。何事もなく過ごせていて私もそのようなことがあったことすら忘れかけていた。そんな彼は友達があまり多いとは言えず、基本一人でいることが多かった。
しかし、そんな彼の周りに人がたかっていたのだ。最初は珍しく友達と楽しく会話しているのかと思って気にはしていなかった。数分した時、ふとそっちの方をみるとなんと周りにいたのはクラスメイトでもなく三年生が周りにいた。クラスの人たちは彼から離れて遠くから見ていた。ついに先輩が来たのだ。
彼はまだ殴られたりしている様子はなかったが確実に何かいちゃもんを付けられていることだけは見て分かった。私も関係者であると思ったので彼のもとに行くことにした。
「先輩さんたち。用があるのは彼じゃなくて私でしょ? 彼から離れて」
「お、こいつが委員長さんの言ってた女子生徒ってやつか。いい女だな」
「でも今日は男の方に用があるんだったな。後輩くん。君には用がないから戻っていいよ」
私は、彼らにそう言われたが引き下がらなかった。今回は嘘ではなく、正直に彼を助けたかったから。しかし、彼はこういった。
「僕は大丈夫だから。君は離れていいから」
「でも! でもあなたは悪くないから。私が助けないとあなたは何をされるか分からないし」
「女の子に迷惑かけるような人にはなりたくないから。早く戻って」
そんな彼の一言にまた惚れてしまった私は引くことにした。いかし、心配でならないことは変わりなかった。彼は私が離れると先輩たちに連れられてどこかへと消えて行ってしまった。 私は彼が戻ってくるまでの間にクラスメイトに何があったのかを聞かれたが本当のことを言える気にはなれなかった。しかし、黙っているのも悪いと思ってしまい
「大丈夫だよ。ちょっと委員会で先輩とトラブルしちゃっただけだから」
そう私は周りのみんなに悟られないように嘘をついた。
ぼっかの超短編集 山川ぼっか @ke0122
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ぼっかの超短編集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます