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「あぁ、結婚する相手は好きなタイプとは違うって良く言いますもんね」
それはそれ、これはこれ、みたいなもんだよね。
「それって本当なんですよね、全くの真逆ですもん」
だからそんなに笑ってやるなって。
「でも、彼の事、本当に好きなんですよ、これでも。指輪も貰って本当に嬉しかったし」
左手の薬指に光る、真新しい指輪を見つめてシホさんが言った。これでニヤけてなければ最高なんだけどなぁ。
「ふふ、だってこのゆ、指輪をもらった時、くふふ、本当こんなことあるのかって思って」
「いったい何があったんですか?」
感動の婚約シーンでそんなに爆笑するなんて。
「わ、笑わないでくださいね?」
「笑っているのはシホさんでしょう?」
「ふふ」
ニヤニヤが止まらないシホさんは、もう一度深呼吸をして真剣な顔をして言った。
「シャンパンの中に入っていたんです」
「え」
「婚約指輪、シャンパンの中に入っていたんですっっ。しかも家飲みでですよ!? 記念日だからってお気に入りのケーキを買って来たら真剣な、真剣な顔をして指輪入りのシャンパン持って来たんですよっっ。照明落としていたからロウソクの明かりの薄暗い中真剣な顔をして指輪入りのシャンパン持ってくるとか、一昔前のトレンディドラマかってっ」
ぐふ、と押さえた手から零れるようにしてシホさんは爆笑する。
確かにそれで来たらちょっと笑いそうだけど、その場はちゃんとシホさんも笑わないで真剣に話を聞いたんですよね?
「いえ、大爆笑でした」
「えーっ」
「いや、彼も狙ってやってたんで、向こうも大成功だって笑ってましたけど。ぐふふふ」
この彼女あってあの彼氏あり、と言うべきというか何と言うか。特別な思い出にしたくて狙ってやっていたのなら、確かに大成功だとは思う。だってこんなにも楽しそうにシホさんが笑っているのだから。
一生、死ぬまで記念日にこの事で笑えるんだろうなぁ。
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