君の瞳に乾杯
カゲトモ
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「ふふふ」
グラスを両手で持ちながら一人頬を緩めていたシホさんとバチッと目が合ってしまった。
別に一人で笑っていたからって変な目で見ていた訳じゃないんだ。何か面白い事でも思い出して笑っていたんでしょ。俺も一人でいる時にそうやって笑って変な目で見られるときあるもん。
いや、変な目で見てないけど!
「いやぁ、実はちょっと、っていうかすごくおもし、嬉しいことがあって」
面白い、と言いかけて嬉しいに変えた? 何があったんだ。確かさっきまで友達と飲みに行っていたらしいし、そこで盛り上がった話題か何かか?
「実は、ふふ、ふふふ」
口を開きかけてまた一人肩を震わせる。言いたいけれど面白くて言葉より先に笑いが零れてしまうって感じ。うんうん分かる。笑い上戸の人ってだいたいそんな感じだよな。聞いているこっちとしては、面白いのは分かるんだけど、もどかしい気持ちになるっていうか。
「ご、ごめ、ごめんなさいっ、くふ、ちょっと一旦落ち着くんで」
そう言って今度は深呼吸。
どうぞどうぞ。日曜の遅い時間はそんなに混んでいないから。
「ごめんなさい、もう大丈夫」
ふぅ、と息を吐いて紅くなった頬を両手で挟んで、胸を落ち着かせたシホさんは静かに口を開いた。
「実は私、婚約したんです」
「っ、それはおめでとうございます」
「ふふ、ありがとうございます」
シホさん、彼氏いたんだな。いつも仕事の話が多かったから知らなかったけど、綺麗な人だしいない方が不思議なくらいか。
シホさんの旦那さんになる人はどんな人なんだろ。でもきっと同じように背の高い、男前なんだろうな。
「彼、ですか? そうですね、全然、そんなイケメンとかじゃないですよ」
またまた、それは彼女目線だからでしょ。世間的に見てイケメンの部類なんじゃ?
「いや、全然。イケメンでもないし、身長も高くないし、タイプでもないし」
「タイプじゃなかったんですか?」
「全然」
バッサリ、と切り捨てるシホさん。そこまでハッキリと言わなくても・・・
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