第四章 自販機でどの飲物を買うかで、○○度が丸裸に! ~クイズ番組研究部 VS FBI!~

ミス研からの挑戦状

 クイズ番組研究部とは、「面白いクイズ番組を作る」ために設立された部活である。

 我が校にはクイズ研があるのだが、全国高校クイズ大会の常連になっていくにつれ、「クイズは、とっつきにくい遊戯」だと認識されてしまった。

 そのため、「クイズは楽しいものだ」と生徒たちに理解してもらうのが目的だ。



 あるとき、僕たちの部室に一人の刺客が現れた。


「たのもーっ!」


 番組の打ち合わせをしているとき、部室の扉がおもむろに開かれる。


「あれ、キミは」


 同じ一組の男子だ。

 

「そう。我こそはミス研! 頭脳は大人、身体は中二!」


 頭悪そう……。


「我々の出題するクイズに、挑戦してもらう! 負けたら、部員を一人よこせ!」


 ミス研は、女子部員を一人欲しいと言い出した。

 

「真意は?」

「部員一人ちょうだい」

「えええ……」


 事情を聞くと、「唯一の女子部員が辞めてしまい、華がなくなった」という。


「その女子というのは?」

「三年だ。受験を機に早々と引退してしまって……」


 受験なら仕方ない。長戸高校って、いちおう進学校だし。


「でも、そっちは男子五人だ。定員は埋まっているだろ? 部として成立しているから部費は出る。困ってないじゃん」

「でも女子は必要だ」

「なぜだ?」

「美少女名探偵ってそそられないと思わん?」

「思う」

「だろ? ましてクイズ研なら、頭脳明晰で美少女揃い!」


 それは否定しないけれど……。

 

「いや、クイズ研本家に行けよ」

 

 女子の割合なら、むしろ向こうの方が多い。知識知恵知性、どれをとっても本格的だ。


「行ったさ! でも門前払いされた」

「だろうな」


 だから番組研に来た、と。


「そもそも、どうして女子が来ないんだ?」

 知恵を絞る系は、女子にもウケると思うが?

 

「問題集を見せてみろ。うーん、どう思う?」

「面白いと思います」


 嘉穂さんの反応もいい。知識欲をくすぐるというアイデア自体は、悪くないように思える。

 

「我々もそう思っていた。しかし、アテが外れてしまって。何がいけないんだろう?」

 

 出会い厨なところを直せば? と言葉がよぎった。

 そもそもの動機が不純じゃないか。推理に純粋性がない。

 が、口に出さないでおく。それこそ、自分で考えるべきだ。


「おまえらどうだ?」


 のんたちに、話を振ってみる。


「パス。女子とイチャイチャするのが目的みたいだからなー」

「出会い厨の巣窟なんて入りたくないよ」

 

 即答! 僕がやんわりと伝えようとしていたことを、バッサリだ。

 

「嘉穂さんも?」

「はい。動機が不純ですよね」


 ううむ。嘉穂さんまで。


「やなせ姉は……」

「晶ちゃんと離れるなんてありえないわ」


 ですよね……。ボク目当てで、番組研に入ったわけだし。


「というわけで、部員の提供はできん」

「そんなー」


 僕がミス研を追い払おうとすると、嘉穂さんが手をあげた。


「あの、部員にはなりたくないんですけど、部員を増やすことは可能だと思います」

「と、申しますと?」

 

 ミス研部員も、食いついた。さっき「部員になりたくないって」ハッキリ言われたことはスルーして。


「あのですね、割と知識自体はマイルドかなーと思います。とんちが効いていて、専門知識がさして必要ない部分は、好感度が高いと」

「ふむふむ」

「ですが、それをアピールする場所がないところが、難点だと思います」

「つまり?」


「そこで、わたしたち番組研究部で、この推理問題をクイズ番組として披露する、というのはどうでしょう?」


 僕は、嘉穂さんのアイデアに感心した。


「クイズ番組研究部で取り上げて、『ミステリ研』はこんなことをしています、とアピールすれば、女子たちにも反応がいいかと」

「そうか。ウチらも女子なので、女子が解けるならと」


 他の一同も、関心を持ち始める。


 僕も、外部の専門知識を取り入れる絶好の機会だと思った。


「いいんじゃないか? 出題はそっちがやってくれ。僕が、番組用にアレンジするから」

「任せろ。とっておきの問題を出そうじゃないか!」


 ◇ * ◇ * ◇ * ◇


 後日、打ち合わせを行った。


「FBI捜査官テストか! 面白そうだな!」


 さっそく、問題を読ませてもらった。


「あー。この問題は除外で」


 僕は、一つの問題を外す。


「どうしてだ? この『子どもの母親を当てろ』問題って、有名じゃないか」



 彼が用意した問題の一つに、「子どもを見ている女性のウチ、子どもの母親はどれだ?」というものだ。


 Aの女性は、背筋をちゃんと伸ばしている。子どもは、彼女には背を向けていた。

 一方で女性Bは、子どもに対して身をのりだしている。子どもの方も、女性の方へ顔を向けていた。

 

「出題者によって、解釈が違うんだよ」

「そうなのか? どのテストでも、女性Bが母親だと出たぞ」


 子どもは親の方を見る習性があり、間違いないと。母親の方も、子どもに足を向けているから愛情があるとのことだ。

 

「僕が調べたケースだと、母親はAだった」


 A母親説は、子どもが背を向けているのは「安心感」からだという。

 

「ひとつの問題で解答が二つあるのはマズい。この問題は削除する」


 他にも、クイズになりそうな問題を探し出し、本番に備えた。

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