特別企画「おそとでクイズ」!

 モールの隣にある国立公園を、収録現場として使うことになった。


 あちこちで、家族らしき団体がビニールシートを広げてピクニックをしている。

 飼い主とフリスビーを用いて遊んでいる犬もいた。

 人もまばらだ。多少騒いでも迷惑にはならないだろう。


「おまたせー」


 やなせ姉が現れた。慶介と腕を組んで、スキップをしながら。彼女も、ガウチョパンツで揃えてきた。


「いつの間にそんなの買ったんだよ?」

「さっきよー。イエーイ!」


 彼女の服装は、七分丈のデニム柄ガウチョと、木の皮を編み込んだサンダルである。さっき買ったばかりなのに、まるでオーダーメイドのように似合っていた。


「さあ、始まってしまいました。本日のクイズ番組研究会! 今回はなんと! 初の、野外ロケでございます!」 


 僕がセリフを言うと、嘉穂さん達が「わーっ」と拍手してくれた。

 慶介にデジカメを持ってもらっている。ポータブルサイズの八ミリだ。スマホでもいいが、画質や確実性を考えるとビデオの方がいいだろう。


「では、クイズ番組研究会番外編、スタートします」


 画面の向こう側にいる想定視聴者を煽りつつ、僕はカメラに顔を近づけた。


 女性陣をなめるように、慶介がカメラを動かす。


「わーいわーい」


 女性陣は、僕の周りをコント走りで駆け回る。かなり張り切ってるな。


 気がつけば、何事かとギャラリーができていた。といっても子供とお年寄りばかりだが。


 屋外でカメラを回しているせいか、女性陣のテンションが妙に高い。


「福原くん、今日はどんな形式のクイズなんですか?」


 嘉穂さんが質問してきた。


「えっと、今日はですね」

「何なのだ?」

「何だろーねー?」


 のんと湊がこちらのタイミングを無視して問答する。やっぱりテンションが高いな。


「今回のクイズ形式は、一問多答クイズです!」

「おおおおおーっ!」


 大げさに、女性グループが驚いた。

 複数の回答がある問題を、一人ずつ答えてもらう形式のクイズである。


「今回は、番組研の四人で答えてもらいます」


 やなせ姉が前に出た。


「ということは、ワタシも参加で?」


 彼女は、自分の胸に手を当てる。

 

「はい。今回は特別編と言うことで、来住先輩も選手として参加してもらいます!」


「いえーい!」


 女性陣がハイタッチでやなせ姉を迎え入れた。


「アシスタント改め来住選手。今日の意気込みを一言でお願いします!」

「足を引っ張らないように頑張りまーす」


 マジでテンションが高いな、今日の番組研は。

 

「全部で、四問出題します。一問だけ間違えでも構いません。ですが、二問間違えると、番組側の勝利となります」


「二問間違えたらどうするんだ?」

「誰かが代表してインタビュー動画を撮って、福原のオカズになるんだよね?」

「するか!」


 個人的に楽しむわけないだろ!

 

「三問無事に正解したら、何かあげましょう! 今日は急な企画にも付いてきてくれましたし」


「いえーい!」


 僕が提案すると、拍手はより大きな物へと変わった。


「それでは参りましょう! 第一も――」

「待った!」


 突然、西畑からストップが掛かる。何か問題があったか?


「どうした、西畑?」

「すまん、男には言いにくい。やなせさん、ちょっと」


 なぜか西畑は、僕ではなくやなせ姉を呼ぶ。

 彼の耳打ちを受けた後、やなせねえが僕に近づいてきた。


「どうしたの、やなせ姉?」

 

「それがね、湊ちゃんのガウチョから下着が透けてるって」


 僕は絶句する。一瞬湊の方を見た。

 確かに、彼女のガウチョパンツだけ生地が薄い。そのため、わずかに光を通している。


 そのせいで、ブルーの布地がぼやけて見えていた。


 中にスパッツを穿いているのんは無事。

 厚手の生地で決めた嘉穂さんも、セーフだ。

 

 やなせ姉の発言を聞いた湊は、頬を真っ赤に染める。


「ひゃあああああああ!」


 突如、湊は悲鳴を上げて、しゃがみ込んでしまった。

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