第18話 約束のために…。①
「ここは……?」
真っ暗な所。
顔を上げると妻『アルマ』が立っていた。
「アルマ……なのか?」
いや、そんなはずはない。だって彼女は……。
驚くアーデルベルトがゆっくりと手を伸ばすが、彼女は彼に頬笑みかけると何も言うことなく反転し、歩き始めた。
「待ってくれ!!」
アーデルベルトはあわてて後を追いかける。
しかし足が重くなかなか前へと進まない。
歩く彼女に走って追い付けない。
それでも彼は一心不乱に追いかける。
息が乱れる、足が軋む、手が痺れる。
それでもなお彼女に追い付こうとアーデルベルトは走る。
そして手が届く直前、巨大な化け物が道を塞ぐように現れ、アーデルベルトを飲み込んだ。
◼
「ッ!!!…はぁはぁ、夢…か?… くそっなんて夢だ」
アーデルベルトは乱れる呼吸を整える。
「……?ここはどこだ?」
周りを見渡すか見たことない真っ白な壁しかなかった。
ベッドとトイレ、それ以外に何もない。清潔そうではあるが、決して面白そうな場所ではなさそうだった。
「本当にどこだここは……そうだ確か」
アーデルベルトは思い出す。兵士たちに取り囲まれたことを思い出す。
「 今は何時だ? 早くしないと娘を心配させてしまう」
片腕の義手は無く、もう一方の手は首に鎖が繋がれている。
脚も座っている椅子に繋がれており、身動きが取れない状況だ。
それでもどうにかしようとしていると真っ白い壁に切れこみが入り、ゆっくりと扉が開く。
「お目覚めかね?」
帽子を被った二人の兵士を先頭に数人の兵士がライフル銃を手にして中に入ってくる。
中に入ってきた兵士の一人がアーデルベルトを見て小さな声で「あいつは」と声を漏らすが、帽子を被った兵士に睨まれ恐縮する。
「何が、目的だ?」
「おや、ここはどこだ。などと下らぬ事を聞かぬのだな」
「は、大方どこかの軍事施設ってところだろ?」
「ふむ、察しが良くて助かるよ」
「そりゃどうも……で、今さら俺に何の用だ? 俺はもう軍を止めた身だ。しっかりと手続きも踏んでいる。こんな仕打ちを受ける覚えはないんだがな」
「そうだったか? 私はそんな報告を受けた覚えはないが、まぁいい、とにかく君への無期間の謹慎処分は取り下げと言うことになった」
「謹慎処分だって?」
「そうだ。少なくとも私はそう聞いている。話を続けよう。君には明日(あす)から軍に復帰、即作戦行動に参加していただく」
「何だって?」
「もちろん貴女の作戦行動中は、あー貴方の娘さん……そうそう名前はペネシア、でしたね。彼女ならわれわれがしっかりと保護しますのてご安心を」
そういいながら男は頭をさげる。
保護などと体(てい)の良い事を言ってはいるが、要するに従えと言うことだ。
アーデルベルトに拒否権はない。
「良いご返事を期待してます」
後ろで拘束された拳を無意識に握りしめると歯を食い縛る。
そんなことを気にすることもなく、帽子を被った兵士は笑みを見せ、そう言い残すと部屋を去って行った。
「ふざけるなーーーー!!!!!」
しばらくして一人となった部屋で、アーデルベルトは大声で叫んだ。
兵士たちはあまりの大きな声に驚き、中へと入った兵の一人があまりの声の大きさに耳を塞ぐ。
「くッ!!」
鼓膜が破れそうになるような声に若い兵士が数人気絶した。
アーデルベルトは錠を外そうと身体の力を振り絞り、首や手首に血が滲む。
「くそっクソックソッ!」
悪態をつきながら暴れるため、何度も呼吸が途切れ途切れになり、息を荒げているように見えるそのようすにその場にいた兵士らの背筋が凍りつく。
「う、打て!打て!!」
怯えた声で命令を下すが、聞き取るものはいない。
皆が腰を抜かして座り込んでしまっている。
そうこうしているうちに鎖がミシミシと音を鳴らし、次の瞬間、鎖が引きちぎれた。
自由になった時、踏ん張った際に漏れていた息が自由となって雄叫びに変わる。
「ヒェッば、化け物だ!!」
アーデルベルトは椅子の足をへし折ると扉のあった方へと近づいていくと壁際で怯える一人の兵士が叫びながら銃を撃った
「バカ、止めろ!!」
それを止めようと別の兵士が言ったが、もう遅かった。
銃弾は止めようとした兵士に当たり、血だまりが出来上がる。
「俺…は…俺は…あ、あぁ!!」
兵士が泣きわめいていた。始終を見ていたアーデルベルトは怯える兵士に近づいていくとライフルを奪いさって地面におく。
「泣いてる暇があるならさっさと医療班を呼んでこい! 肺をやられている。今すぐに治療しないと死ぬぞ!!」
「あ、あぁ、わかった。こ、こちら、ら……」
手にした通信機を持って慌てて呼んでいる。
しかし、震えた声では相手によく伝わっていないようだ。
「貸せ! 怪我人だ!今すぐに独房室に担架(たんか)と医療班(メディック)を連れてこい!」
アーデルベルトは見かねて通信機を奪いさると通信機へむけて叫んだ。
「あ、あんたはどうして……」
その震えた声には聞き覚えがあった。
アーデルベルトはすぐに確かあの時、地下の駐車場で一緒にいたやつと同じであると気づく。
数秒後、扉か開くと白衣を来た兵士たちがやってきた。
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