第4話「何処か間接が外れた日」
時同じくして謎の生物の軍勢たちは東の最端地域へと広がり、たくさんの人々を食らっていた。
民衆は連絡なんてする暇はない。
監視員たちの連絡はつかない、逃げ惑うので、誘導するので必死だった。
そのためこの事が全ての場所に伝わりきるのは時間がかかった。
それはグロックス家も同じだった。
偶然にも町の異常を知った近所の男性が大急ぎでグロックス家へと伝えに来るまでは……。
「おーいアベルいるかー!?」
素早くインターホンを鳴らしながら男性は扉に向かって叫び声を上げる。
「パパ!おじさんだよ~~」
と声を聞き、ペネシアは楽しそうに玄関に向かう。
「どうしたのかしら?」
「わからんが、急ぎの用かも知れない。話を聞いてくるよ」
「ええ、お願い」
後を付いていったアーデルベルトが玄関のどびらを開けるとペネシアが
「髭のおじさん、こんにちは~」
と嬉しそうに抱きついた。
「おお、ペネシア。こんにちは」
と言って男はゴツゴツとした大きな手で頭を優しく撫でる。
「どうしたんだそんなに慌てて」
「あぁそうだ。大変なんだよアベル」
「ん、どうかしたのか?」
「実は町を囲む石壁が破壊されたみたいなんだ」
「何だって? 壁を壊したのは例のウワサの連中か?」
「いや、違う見たこともない化け物が大群が襲って来たみたいなんだ」
「化け物が? ……まぁ、お前がくだらない嘘をつくわけはないか。それで、どこが壊されたんだ?」
「北東側の壁だそうだ」
「ここから近いな……」
「とにかくアベル、嫁さんとペネシアちゃんをちゃんと守ってやるためにも急いで一緒に逃げるんだ」
「お前は?」
「俺も疑い深いおふくろとここらの連中を説得して一緒に逃げるつもりだから大丈夫だ。また後でな」
「ああ、無事に生きろよ」
「お前もな」
二人は軽く握手を交わすと
「おじさん~バイバイ」
「あぁペネシアちゃんまたな~」
アーデルベルトは手を振り続けるペネシアの背中を押しながら家の中へ入って行った。
「アルマ!」
アーデルベルトは大きな声で彼女を呼びつける。
「パパうるさい~」
「あなた、どうしたのそんなに大きな声なんか出して」
と言ってキッチンから出てきたアルマは不思議そうな顔をした。
「あの人になんて言われたの?」
「説明は移動中に話す。とにかく今は時間がない。早くここから逃げないといけないんだ!」
「――? ……わかったわ。何でかわからないけどあなたの言うことだもの信じるわ」
「ありがとう」
アーデルベルトはアルマに非常用品を詰めたカバンを持ってくるように指示し、彼は家族と自分自身の護身用にと奥の部屋から愛用銃を取り出す。
銃の名はファイブセブン。そしてツェリスカである。
この銃はアルマと出会う前に趣味も兼ねて使っていたものだ。
(久しぶりだな。毎日欠かさず整備してきたのはこの日のために、家族を守る為に会ったんだな)と心の中で言いつつ防弾ジャケットを用意、その上からコートを羽織るとホルスターとマガジンホルダーを腰のベルトに装着する。
そして準備を終えたアーデルベルトは小さく呟いた。
「命に変えても必ず家族を守って見せる」
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