第2話「何処か間接が外れた日」
ウーウーと甲高い警報がが鳴り響くしかし誰も一人として警報に対して焦るものはいなかった。
たまに誤作動で鳴ったり、他の奴が連れてきた子供がいたずらで鳴らしてしまったりするからである。
ほとんどの者が呆れ、笑い、そして監視塔にいる兵士らもまた笑った。
「なんだ、また故障か?」
「うるさいなぁ早く終わってくれよ」
「馬鹿馬鹿急げ急げ!」
「んな焦るこたないだろ? 誤作動なんていつもの事じゃねぇか」
「そうじゃねぇてなんていうか……そう化け物だ。化け物がこっちに向かって走ってきてるんだよ!」
「あぁ? ウサギがか? なら鍋にでもして食っちまおうぜ」
「おぉ肉か、最近肉も高ぇからなぁ」
「ばか!マジだってマジもんの化け物が来てんだって!」
「おぉおぉすごいなぁー」
「そういうのは4月にするもんだぜ?」
「疑うってんなら覗いてみろよ!」
男の指さす方向に残りの監視員は鼻で笑いながら双眼鏡を覗き込む。
「お、おい……なんだあれ?」
「猪いや、狼か? だが、あの大きさは」
「ここからじゃハッキリとは分からないが、かなりの数なのは確かだ」
「どうすんだ? 俺こんなの初めてだぞ?」
「知るかよとにかくだ。まずは連絡だろ?」
「あぁそうか」
警備員の一人が通信機のスイッチを入れ、上層部へと報告する。
しかし本日は誤作動の原因を調べるための修理工事中であった為、電源が落ちていたのでいくら叫ぼうとも連絡がつくことはない。
本来落とすべきでない箇所の電源ではあるが、作業員の新人が誤って電源を切ってしまった為繋がらなかったのである。
本当にタイミングの悪い話である。
◇
警報が鳴り響く中、街の人たちはいつも通りに過ごしていた。
街の人たちが異変に気づくのは先行した小さな個体の一匹が街に侵入するまさにその時だった。
その化け物に気づいたのは裏通りを歩く数人の男の三人組であった。
「何だ~ヒックッこいつは~~」
「こんなところでパフォーマンスか?」
まだお昼だとゆうのに酒で顔を真っ赤にし、酔っぱらった男たちは指を差しながら笑っていた。
化け物がゆっくりと男たちに近寄っていく。
「おっ近づいてきた」
「おぉ毛並みとかマジもんみてぇ」
「毛皮使っているのか? 凝ってんな~~」
男がゆっくりと手を伸ばしたその瞬間、金属音にも似た音が響き、男の腕はなくなった。
「え?」
男たちはこの一瞬の出来事に一体何が起きたのかはじめは理解出来なかった。
それが腕が食われたのだと、化け物であると分かったのは吹き上がる血飛沫と鉄の臭いが男たちの鼻に付いたまさにその時であった。
「う、腕が――俺の腕が〰〰‼️」
二の腕を押さえながら叫ぶ男は焼けるような鈍痛に涙を浮かべ、膝を付く。
うめき声を上げながら倒れた男を化け物はその赤く輝く瞳で見下ろすと口を大きく開き、男を喰らう。
「助けて、助、助け――」
男は肉を裂かれ骨を砕かれ、そして苦痛の叫びを上げ化け物の栄養となった。
「ひっ――」
「ば、化け物だーー‼」
他の男たちは悲鳴を上げながらその場を逃げ、助けを求めようと走り出す。
裏通りから大通りへと抜けるその瞬間、化け物の鋭い爪が男の背中を引き裂いた。
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