第4部 残念G少女、国王に会う

第36話 残念G少女、お城に忍びこむ

 今回のお話は、お食事中に読むのはお控えください。

 また、G耐性の無い方は、「◇」から「◇」の間は、飛ばしてお読みください。


――――――――――――――――――


「お姉ちゃん、ここ狭いね」


「ホント、狭いわね」


 私とドンは、人が体を横にしてやっと通れるほどの、狭い地下通路を進んでいた。


「でも、お姉ちゃんの魔術便利だね」


 通路を照らすため、私は魔闘士のスキルを発動させている。


「あたしが欲しいのね♡」


 呪文を唱えると私の身体が青く光り、地下通路を照らしだす。

 

「あれ? お姉ちゃん、何かがたくさんいるよ。かなり力を持った魔獣だと思う」


 確かに、進行方向から何か音がしている

 かさこそいう音が。


 ◇


 私たちは、地下通路から小さな体育館くらいある空間に出た。

 身にまとう魔闘士の光で、なんとか照らせるほど広い。

 ただ、壁際は薄暗くよく見えなかった。

  

「何かが、たくさんいるよ」


 確かに、カサカサいう音が、うるさいほどになっている。

 ドンが呪文を唱えると、空中に光の玉が浮いた。

 それが照らしだす光景は、戦慄すべきものだった。

 普通の人にとってだが。


 壁には全長五十センチはありそうな、巨大なヤツらがいた。

 そう、ぬめつくような黒光りする体、うごめく触角、地球のものより遥かに大きいが、それはまさにゴキ〇リだった。


「きゃー、お姉ちゃん、怖いーっ!」


 ドンが怯えている。

 おのれ、弟を怖がらせるとは許せん。

 私は魔闘士のスキルを唱えた。


「あたしが欲しいのね♡」 


 魔闘士スキルレベル1、その呪文に答えるように、Gの群れが包囲を狭める。


「え~、そんな~、あたし困りますぅ~♡」


 魔闘士スキルレベル2、さらに包囲を狭めたGに怯え、ドンが私の背中にすがりついた。


「いや~ん、こんなところでぇ♡」


 魔闘士スキルレベル3、目と鼻の先まで来たGが、私の身体が発する強い光で一瞬動きを停めた。


「ぶっ飛べっ!」


 正面にいるヤツのどてっぱらに、掌底を叩きこむ。

 

 ブゥオン

 

 青く光る私の右手が、そんな音を立てた。


 ボシューッ


 正面のGが、爆散する。

 それに巻き込まれた周囲のGが、さらに爆散。

 正面にいるヤツらは、部屋の隅にいたるまで粉々になった。

 初めて体験する魔闘士レベル3の力。思った以上の威力だった。

 側面、そして、後ろのヤツにも掌底を打つ。


 ブゥオン

 ボシューッ


 ブゥオン

 ボシューッ


 ブゥオン

 ボシューッ


 部屋からヤツらの姿が消えた。

 ドンがGの残骸を魔術で圧縮、バスケットボールほどの黒い玉が十余りできた。

 玉は、私たちの周囲にフワフワ浮かんでいる。


「おっ!」


 私の体がキラキラ輝く。

 今の攻撃で、レベルが上がったらしい。

 しかし、Gを倒してレベルが上がるって……。


 ポチ(カニ)たち『まさに、残念!』


 ◇


 少し広くなった地下道は、やがて行きどまりとなり、左手に上への階段が現れた。

 それを昇ると扉がある。

 ドンが開錠の魔術を唱え、あっさりそれを開ける。

 そこは、貯蔵庫のようだった。

 生ハムの塊や、野菜が入ったカゴ、恐らく穀物が入った袋などが所狭しと置かれていた。


 買うと高い果物や生ハムをちゃっかりいただく。ゴリラバッグは、いくらでも物が入るから、こんな時には重宝する。

 貯蔵庫からさらに階段を上がると、厨房に出た。

 ちょうど仕事の合間なのか、働いているのは二人だけだった。


「あ、あなたたちは?」


 そばかす顔の少年が話しかけてくるが、それには答えず、厨房から出る。

 問題は、ここからだ。

 証拠を残さないよう、タリランさんは、私に地図を渡さなかったのだ。

 覚えている地図を頼りに、右の廊下をズンズン進んだ。 

 途中、執事風の人やメイド風の人とすれ違ったが、ぎょっとした顔をするだけで、私たちを止めようとする者はいなかった。

 ドンの周囲にはぷかぷか黒い玉が浮かんでいるから、明らかに怪しいんだけどね、私たち。


 見つけた階段を上へ上へと進む。

 階段室から出ると、青い絨毯が敷いてあるフロアに出た。

 これは王族が住む区画の目印で、青色、黄色、赤色と住んでいる者の位が高くなるそうだ。

 信号機みたい。


 そして、私たち二人が黄色の絨毯を踏んだ時、前方から来た騎士に呼びとめられた。


「あなた方、どなたです?」


―――――――――――――――――――――――――


ツブテ「この展開はっ! 作者、チャレンジ精神あり過ぎっ! いや、むしろ、無謀!」

作者「この手が、この手が……勝手に動いたんです」

ツブテ「犯罪者みたいだね」

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