第16話夕暮れのほっこり

サトルはその日「野菜雲」というダイニングバーで夕方5時から飲んでいた。店内は木目調のお洒落な雰囲気である。

そのカウンターの向かいの厨房にはこの店で働く梨奈がいる。カウンターから少し振り返るようにすると、お店の入り口側道路沿いはガラス張りになっているので、外がよく見える。向かいには古着屋が見え、その古着屋の上は新聞社の事務所のようであった。

何気なく見ていると勤務中のサラリーマンや、学生などの装いは3月相応なのか。そう思った時、梨奈と出会ってもうすぐ1年くらいだと思った。

店はまだサトル以外のお客さんはおらず、梨奈と断片的に話をしていた。

「1対2対3だから…あ、スプーンは…。あ、あった。…よしっ。」

キリが良さそうだったので、

「バジル串とトマトチーズ串。」

「オーダー入りました!」

「イャア!」

掛け声よく、活気よく呼応している。

「そういえばさぁ、大人の塗り絵買って見たんだ。」

「へぇ、難しそうだね。」

「帰ったらやってみようと思うんだけどまだやってないよ。」

よく、料理しながら話しかけられるな、と感心する。

7時くらいになって混み始めてきたのでお会計してもらうことにした。梨奈が「今度、奥さんと来たら。ほっこりするから。」とさらりと言ったのであった。


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