第二章 グラスダースの迷い子
第19話 エイリアス魔法協会
白い光に包まれてめちゃくちゃ眩しい。
自分が落下しているのか、それとも、上昇しているのかもわからない。
えらい勢いで移動しているような気がするのだが、それもよくわからない。いわゆる無重力状態なのかもしれない。それならば落下しているはずなのだが、風圧みたいなものは全く感じない。
しかし、右手はしっかりとイチゴの手を握っている。彼女のやや小ぶりなぽっちゃりとした手を握っている。
他に何も感じることができない状態で、イチゴの手を握っているという事実が俺に安心感をもたらしてくれた。思わず彼女の手をギュッと握ってしまう。それに応えるように、イチゴも俺の手を握り返して来た。
何も見えないし何も感じない。俺が感じているのはイチゴの手とその温かさだけだ。イチゴの手を引いて抱き寄せてみた。すると、柔らかい彼女の体が俺の胸にすっぽりと収まった。これは背中だ。俺はイチゴを背後から抱擁している格好になった。右手でイチゴの右手を握っている。そして左腕でイチゴの腹部を抱きしめている。イチゴが着ているのは、昼間に部屋着と寝間着兼用として買ったえんじ色のジャージだろう。衣類の肌触りもはっきりとわかる。
そして、イチゴも俺と接触している事で何らかの安心感があるのだろうか。柔らかいお尻を俺の下半身へとこすり付けて来た。これはちょっと気持ちいいかもしれない。こんな状況で性的に興奮するなんて思ってもみなかったのだけど、しちまった。イチゴの尻の威力は半端なかった。
何だか昂って来た俺は、右手をイチゴの胸元へと移動させ、彼女の豊満な胸を撫でてみた。
たぷんとした質量感と柔らかさは極上と言って差し支えないと思う。これぞ究極の巨乳であると断言してもいい。今は両手でイチゴの巨乳を撫でながら、その先端にある二つの蕾が段々と膨らんでいるのを確認した。
うむ。これは不味いかもしれない。
完全なセクハラ行為だ。
もし葉月に見つかりでもしたら、激しく糾弾されるのは間違いないだろう。そしてそれがウルファだったなら……命が無くなるかもしれない。
しかしなあ。葉月はいわゆる美乳系で、大きさ的にはそうでもないが形が良いと思うんだ。そしてウルファはロリ系であって、胸はまあ、つるぺたと言って差し支えない。
何だか、幼馴染の葉月と竜神の国の親衛隊長と、異世界の勇者見習いの胸を比較検討するなど不謹慎極まりないと思うのだが、そんな理屈は抜きにして、この豊かな胸を堪能するのは男子としての本懐なのではないか。
イチゴの胸を撫でながらこのまま強く揉んでみたいとか、ジャージの下に手を突っ込んでこの巨乳に直接触れてみたいとか、俺はそんな大仰な欲望を抱いていたのだ。
しかし、世の中はそんなに甘いものではなかった。俺はイチゴを抱いたまま何か固い床の上に落下したのだ。
「うぐええ!」
情けない叫び声を上げてしまった。これは、イチゴを抱いたまま背中と後頭部を打ち付けてしまったのだから仕方がない。目を瞑っていたにもかかわらず目の前には火花が飛び散っていたし、気絶しそうな位の激痛だった。
「おやおや。お二人は仲良しさんですね」
これはアルちゃんの声だ。あの長ったらしいフルネームはとうに忘れている。
「さあ、イチゴ姫を介抱して差し上げなさい。もう一人の壮太君もね。着地の際に背中を酷く打撲したようですから」
目を開く。未だに火花が飛び散っているのだが周りを見渡してみる。二人の女性に支えられたイチゴが俺の上から離れていく。例の、煌びやかなローブをまとっているアルちゃんがいた。何か大きな木造建築の大広間といった部屋だったが、床は大理石のような艶のある白ぽい石造りとなっていた。道理で痛いはずだ。
「ここは?」
「ここはエイリアス魔法協会の本部ですよ」
「本部?」
「そうです。クラスダースの王都アラトフにあるエイリアス魔法協会の本部です」
なんてこった。
敵の本拠地に連れて来られたって事か。
「ではシャリア、壮太の治療を。実体化した際に背と後頭部を床に打ち付けてしまったようですからね」
「かしこまりました、アルダル・アスラ・ジブラデル様」
アルちゃんのフルネームをすらすらと淀みなく言えるシャリアと呼ばれた女性。彼女は青い法衣みたいな衣装をまとっている青白い髪の若い女性だった。彼女は俺の傍に跪いた。
「山並壮太さまですね。今、あなたを苦しめているその痛みを取り除き癒して差し上げます。さあ目を瞑って心穏やかに」
「ちょっと待って。イチゴは何処へ連れて行くんだ? 彼女をどうするつもりなんだ?」
「姫様は我がエイリアス魔法協会が手厚くおもてなし致します。ご心配には及びません」
「信じられるか」
「でも、今の貴方は何もできませんよ。起き上がれもしない」
本当なのか?
起きようと思って少し体を捻ってみたのだが、背に激痛が走った。とても立ち上がれそうにない。
「イチゴ姫の事は忘れてください。今はご自身の体を癒す事だけを考えて」
シャリアの手のひらが俺の額に当てられる。そして彼女の全身が淡く輝き始めた。
「安心してください。ここにはあなたを攻撃する者、傷つける者はいません。さあ、心を開いて」
彼女の体から俺の体へと温かい光が流れ込んできたような気がする。これは物凄く気持ちがいい。すると彼女、シャリアが俺に覆いかぶさってきた。体中が温かくなり、背の痛みが溶けて無くなっていく。
「少し眠りましょうね」
俺は目を瞑る。シャリアの頬が俺の頬とくっついてこすれ合う。そして彼女の唇が俺の唇と重なった。その瞬間に、俺の体は何か大きな光に押し流されたようだ。俺が覚えていたのはそこまでだった。
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