第2話
目的のコンテンツは二つとも二階にありましてね。
楽しみのあまり一段飛ばしで階段を駆け上がりました。
関係ない話なんですけど歳は取りたくないですね。
僅か十数段を走り抜けたら、もう息が上がるんですよ。
でも瞳はキラキラしてましてね。
もう『ハア…ハア…ハア…キラキラキラ!』ですよ。
小学校の近くでしたら通報されるレベルにハアハアしてました。
……まあ、小太りのおっさんがハアハアしている時点でかなりキツイ姿ですけどね。
さて、まずはエヴァですよ! エヴァ!
すでに結構並んでましたけどそんなの関係無え!
いまの僕は何しろエヴァパイロットですからね。
きっと落ち込むシンジくんを叱咤激励してウザがられたり、アスカになんか言って引っ叩かれて、ミサトさんにはきっとあきれられたりして、そんでもって綾波とは……うん、きっと会話しないだろうね。
だてに30年間ボッチやってないですからね。
……まあ、いいんですよ!そんなことは!
とにかくエヴァですよ!
エバー!(ミサトさんリスペクトをしつつ)
そして並ぶこと約40分、ついに出番が来ました!
そこで僕は一つの真実に気付いたんです。
エヴァのアトラクションってね?
四人同時プレイなんですよ。
僕は一人なわけですから残り三人は当然知らない人達と組むんです。
僕の他の三人は友達同士だったらしくハシゃいでましたよ。
しかもいわゆるウエ~イ系な方達でね、もうテンションが半端ないんですよ。
シンクロ率で例えたら4パーセントと80%くらい差が有るんですよ。
もうね、これが本当にエヴァに乗ってたらならシンクロ率低すぎてすぐに降ろされるレベルですわ。
でもこれはアトラクション!
こんな状態でも充分エヴァで戦えますよ!
ああ本当にアトラクションでよかったな~(涙目)
あれ? これは…涙?
俺、泣いてるの? どうして?
というわけでテンションが映画版のシンジくんばりに低下してるテンションで操縦席に乗り込みました。
おっと書き忘れてましたが、操縦席に乗り込む前にですね、ゲームの説明がスタッフさんからありました。
まず操作説明と攻撃を受けすぎるとシンクロ率が下がって動けなくなりますと。
でもそこからしばらく立つと動けるようになるんですが、その際にシンジくんばりに『動け!動け!動いてよ~!と叫ぶと若干早く回復します』と実演してくれるスタッフさんの熱演に少し引きながらも操縦席に入りました。
そしてVRゴーグルを被り、ヘッドフォンをつけたら準備完了です。
そこはもうエントリープラグの中です。
ミサトさんやリツコさんの激励の後にLCLが注入されます。
思わず息を止めてしまうほどにリアルでした。
満たされるとアニメでも流れたキラキラとしたエフェクトの後にネルフの格納庫が映し出されます。
ガタガタと揺れた後にゆっくりと機体が移動されます。
グイーンと画面が(いや、格納庫か)が動いて広い空間に出て行きます。
見ると横には青、紫、赤のエヴァが見える。
つまり零号機、初号機、二号機(2の漢字が出なかったのでこれでご勘弁を)が見えると同時に今回の戦いの戦友達の声も通信装置を介して伝わってきます。
感嘆と興奮の声、互いに言い合って騒いでいます。
対して僕が乗るのは六号機、今回の為に用意された新鋭機ですよ。
騒いでいる新兵たちと違って僕はもうイメトレを済ましていますからね。
落ち着いたもんですよ。
べ、別にぼっちだったから現実逃避してたわけじゃないんだからね!
さて全てのエヴァがカタパルトにセットされました。
いよいよ出陣です。 猛スピードで動き、地表へと出ました。
で、デカイ! 使徒ってこんなにデカイの?
しかし面食らったのは一瞬、仲間達と共に全弾発射です。
落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろーー!
心の中で叫び続けます。
仲間達も互いに連絡を取りながら叫んでいます。
零も一も二も互いに連携を取りつつ、
でも僕は無言です。
だって誰も声掛けてくれないだもん!
い、いや僕はエヴァンゲリオン六号機パイロットですよ!
戦において無駄口は死、あるのみ!
ですから何も気にしてません!
ただ…ただね? 零号機の方も騒いでるのはどうかと思うんですよね。
ちょっと…まあ、ちょっとだけですよ?
だって零号機って綾波じゃないですか?
無口でミステリアスで笑顔が可愛らしい。
そんなパイロットが乗るのが零号機なわけじゃないですか?
だから騒ぐのはどうかな?って思うんですよ。
まあ楽しみ方はそれぞれですけどね?
これなら僕が零号機に乗ってた方がよかったんじゃないかな…なんて考えますよ。
ほら、だって僕って無口じゃないですか? しかも綾波と同じくボッチなわけですから、それはもう僕が綾波のかわりに零号機に乗った方がベストですよ。
……だから…口を開かなくても…楽しく談笑…しなくて…もいいんですよーーーーーー!
…ああ、すいません。 取り乱しました。
さて戦闘のお話ですよ。
激戦でした。 間違いなく。
僕も奮闘しましたよ。
武器を持ち替えて、何度も攻撃を浴びながらね。
ただ終始貫徹しても最後は虚しいものでした。
無慈悲に左側にあった活動限界時間がゼロを指した瞬間、機体は停止。
動けなくなった僕の前でゆっくりと使徒が…禍々しい口を開いて…。
そして世界は終了を迎えたのです。
「ありがとうございました」
スタッフさんの明るい声でこちらに戻された僕は明るい世界を見ました。
そして見上げながら、
「知らない天井だ」
世界を救えなかった僕は何も言わずその場を立ち去ります。
後ろでは共に戦ったパイロット達の笑声を耳にして。
静かに後ろを振り返りながら祈りました。
「僕達は世界を救えなかったけれども誰か、次の誰かが使徒を屠って世界を救ってほしい」
足取りは僅かに重かったけれど、僅かな希望をその場に置いて進む。
次はカメハメ波だーー!
と叫びながら。
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