帰郷(270字)

親危篤と連絡があり、男は十数年ぶりに帰郷した。両親とは長らく疎遠になっていた。駅から実家までは歩いて三十分の道のりだった。田圃の間を抜けていくのだ。


炎天下を歩いていると、道端で何匹もの蛙が干からびて死んでいるのが目についた。幼い頃に毎年見ていた光景だった。故郷は昔と少しも変わっていなかった。


うだるような暑さだった。畑の脇にはもぐらの死骸が転がっていた。雀の死骸もちらほら見かけた。道路では牛蛙が車に轢かれて潰れており、小川の岸には腐敗した猫の死骸があった。


どこもかしこも死だらけだった。男はふいに立ち止まると、踵を返して駅に戻っていった。

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