大正アルケミスト復讐譚

独一焔

玄関前で

 胸が、ひどく高鳴っていた。深呼吸をしてそれを落ち着かせる。


「ここまで……来たんだ」


 僅かな話からヒントをかき集めて、やっとここまで辿り着いた。

 私は、彼に会わなければならない。会って話を聞かなければ。


 アポなら取った。

 予想より随分と優しい声だったが、実際はどうなのか分からない。


「変わり者が多い世界だったから」


 あの人はそう言って笑っていた。彼もそうである可能性は拭えない。

 でも、それでも、私は行く。行かなければならないんだ。


 あの人が、『彼女』が最初に、そして心の底から──した人の元へ。

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