第29話 令和ですよお嬢様!
「ねえ知ってる?もう平成ではなくて新年号に変わったのよ」
くるりとこちらを向いて話しかけてくるお嬢様。
「お嬢様、まめしばのように言われてもどうかと思いますが。そして令和になったのは今年の五月ですよ?」
「そんなもの知ってるわよ!!」
ふん、と
「五月でしょ?知ってるわ、そうよ五月よ五月、今は五月…」
ぶつぶつと呟くお嬢様に
「余計意味が分からないのですが…」
と小さくツッコミをいれつつ、呆れてため息をつくと
「そういえば、来年いよいよ東京オリンピックね」
「話が急すぎますね」
「貴方は行くの?」
チラッと此方を見てくるお嬢様。
「お嬢様が行くのであれば、勿論着いていきますが…」
「それなら私と」
「まあ、休暇とって自分で行きますけどね」
当選、と書かれたスマホの画面をお嬢様の目の前に突きつける。
「なにそれ果たし状みたいに突きつけないで」
眉間にしわを寄せて不満そうに睨み付けてくる。こんなにもしわを寄せていたら、老後のしわの量が心配ですね。
ぐるっと目を回していると、なにやらぼそぼそと呟いている様子。
「…ったのに」
「はい?」
「だから、せっかく一緒にいけるようにちゃんと応募して、当たったから見せに来たのに…」
お嬢様…まさか、、
「ちゃんと御自分で正規ルートで手に入れたのですね。てっきりお嬢様という権力を使って手に入れるのかと…」
「やかましいわ」
厳しいツッコミを入れるも嬉しそうに笑っている。
あれ、、
「これではチケット一枚あまりません??」
「そうね、同じ種目だし…」
お互い見つめ合う…これは、まずいやつじゃ…
「あの、麗奈様は…」
ああ、というように頷き
「学校ね」
ですよね…
カランコロンという軽い玄関の鈴が鳴ると威勢よく
「ただいま戻りました!!」
という声が。普段ならならない重い気持ちになりつつ、二人揃って同じ玄関の方向を見つめる。
「いやぁ、どうしたんですか?お二人揃って阿保みたいな顔しちゃってますよ!」
あはは、と間抜け面で両手一杯に荷物を抱える青年…もう一人の執事、孝太だった。
「…あいつしかいないわよね、」
「お嬢様、この小説恋愛という概念をぶち抜きすぎですね…デートの一つもさせてくれやしない…」
二人揃って大きなため息をつき、
「「東京オリンピック行くぞ…」」
「え?」
仲良く(?)三人で行きます。
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