第8話 パンケーキの復讐
「…苦い、」
ごきげんよう、皆様。机に突っ伏し、昨日の黒焦げパンケーキの悪夢に魘されていた。あいつのせいで、執事の隼人がお茶に黒焦げパンケーキ(私が自分で焼いて焦がしてしまったもの)を食べなきゃいけなくなりましたわ。そのおかげで口はパサパサ、おまけにとても苦い…お父様に食材を大事にしなさい、だなんて言われたけれど…そこまでの話ではなくて?
「憂鬱だわ…」
それに、お父様の会社のパーティーで一度お会いしただけの方から茶会の招待をされてしまいましたし。茶会だなんて、するよりも、屋敷で料理の練習をした方がよっぽと効率的だわ。
「ねえ隼人、何故なのかしら」
後ろで掃除をしている執事、隼人に声をかける。
「お嬢様、わたくしはお嬢様の心を読むことはできないので何故かと言われても…」
しかめっ面で(こちらに顔は一切向けずに)こたえる。いつも人の言いたいことわかるくせに…
「まあお嬢様の言いたいことぐらいすぐに分かりますけど。どうせ次のお茶会の話でしょう。」
「あんた、さっきはよくも惚けたふりして…」
あまりにも人の話を聞く態度が悪くて頭にきたため掃除機のコンセントを引き抜く。
「あんたは自分のお嬢様の話すらまともに聞けないわけ?」
「茶会ごときで何をそんなに…あれでしょ、デートに誘われるかもしれないとかそういう乙女心みたいなやつでしょう」
一瞬でコンセントを奪い返され、余計腹が立つ。
「そんなわけないでしょ!でもほら、私は北条財閥のお嬢様だし、可愛いから…」
自分で言い、少し照れながらも隼人の反応を見守る。すると、わなわなと肩を震わせて
「お嬢様、自分が可愛いだなんて…フライングエイプリルフールですか??」
…はぁ?
「ああ、すみませんお嬢様。お嬢様が可愛ければその辺の蜘蛛のほうがよっぽど可愛いし虫を食べてくれるので役にたつかと…なんせ、お嬢様なんて黒焦げのパンケーキを焼くぐらいしか特技がありませんしね!」
キラキラとした悪意100%の笑顔で話を続けてくる。悪魔だ…
「まあまあ、そんなに怒らずに…あんまり怒ってると胸だけでなく器も全く無いだなんて噂をされますよ?」
これまた悪意100%の刺々しい言葉。胸がどうとか、関係ないでしょう…
「…というかあんた、それセクハラよ!!訴えてやる!!」
顔を真っ赤にして(自分では見えないが顔が熱いから多分)隼人に近くにあった箒を投げつける。
「そういえば茶会の話はどうするのですか」
箒を片手で受け止めてさらりと話を切り替えてくる。近くのクッションを手に取り、また隼人に投げつける。
「断ってやるわ、あんたに美味しいって認めさせれるようなパンケーキを作ってやるわよ!」
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