また君に会いたい
カゲトモ
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「わっ、マジかよ!」
なんて声を上げてもそれは止まることなく地面に向かって一直線に落ちる訳で。
バシャーンッ、悲しい音を立てて地面に広がってしまった。俺の、
「俺のチョコレート・・・」
まだ少ししか飲んでいないのに・・・ホイップなんて全然手を付けていなかったのに・・・マジか・・・悲しい。
「悲しい」
三十路独身男が昼間に一人で床にドリンクをぶちまけて「悲しい」なんて言葉を呟いている事実がすでに“悲しい”な、なんてね・・・
新作のチョコをたっぷりと味わえるドリンクだったのに。俺の右手め、このバカ野郎! なんでスマホを取ろうとしてカウンターに置いたカップにぶつかるんだ! いや、よそ見していた目が悪いのか! いや全部俺か!
なんて自分に自分の罪をなすりつけてみたりしながら雑巾片手に膝をついた。
くそ、せっかくゆっくり飲もうと思って駅前で買って小走りで店に帰って来たと言うのに、全部水の泡になってしまったじゃないか・・・
「もう絶対よそ見しない」
いつもそう思うけどね。大切なものからは絶対に目をはなしちゃいけないんだ、よそ見なんてしているから大切なものは自分の手をすり抜けてしまうんだ・・・なに、俺浮気した男なの? いや、万物においてそれが真理なのかもしれない。
ドリンクをぶちまけただけで真理に辿り着くなんて、俺の真理は安いな。
「ふぅ」
空になってしまったカップをゴミ箱に捨てて電気ケトルのスイッチを押す。同じものは作れないけれど、カフェモカなら作れるし。本当は買い直しに行きたいくらいだけど、それは恥ずかしいし。また来たのかよコイツ、いくら美味しいからって一日二杯は糖分の摂りすぎだろwやベーww。とか思われたら辛いじゃん。俺は妄想過多なタイプなんだ。
「あー、新作飲みてぇ」
もう少しで自作アイスカフェモカwithやけくそ泡立てホイップが完成しようかというとき、ピロン、とスマホが間抜けな音を出した。画面を覗くとミケからだった。
“もう出勤してるー?”
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