第70話 - 賢者の挿話
クラマとヤエナが去った後、2人の姿が消えても賢者ヨールンは
闇の中でも
まるでそれは
しかし――
「いつまでも人形のままでいられるか……」
ソレは聞こえるはずのない声。
男の口は動いていない。
当然だ、
ここには青年の形をしたモノしかいない。
いや、もうひとつ……
「ィ……ィィ……ァィ……」
クラマがいなくなったのを見計らってか、
――魔物。
ヨールンは魔物に手招きをすると、近寄ってきたそれを両手で頭上に高く抱え上げた。
元は人間――いや、神の造りし“人形”であったもの。
今やそれは顔もなく、手もなく、足もなく、ただ体の
知性を捨て、
今となっては何も語れぬ当人にしか分からない。
魔物と呼ばれることになった、《神の粛清》を経た古代人たち。
魔物を頭上に
「先輩……」
美しい青年の声には、どこか遠い
賢者ヨールンは魔物を自らの膝の上に乗せ、再び釣り竿を地底湖に向かって構える。
「
「ィ……ィィ……」
膝の上の物体に、その言葉が通じているのかいないのか。
「さて、うまく動いてくれるかの……儂の可愛い人形たちは……」
賢者は魔物を優しく
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