第52話 変わる日常

 二つ名の獲得により、私の呼び名も変わってしまった。『白桃』だから『もー』だそうで。


、洗い終わったの?」

「セレスです……終わりました。」

『何なのよ、同じ作業ばかりでつまらないわ!』

「セレ、じゃなかった。皿洗いも仕事なの、頑張ろう?」

『洗ってるの私じゃない!』

「そうともいう。頑張って。」

「……?」


 次の日から私の仕事は皿洗いになり、屋外へと異動させられた。

 理由は簡単。色物というか好き者というか『薄着の好きな野郎』が、私を見るために食堂の席を陣取ってしまった。

 下着さんが服を嫌い、野郎の視線に嫌気を露わに熱波を放つ。食堂はサウナ状態になり、私は1時間足らずでアンナさんに怒られた。


『私は悪くない。服を着ようなどと言うからだ。』

『昨日も教えたじゃない、セレスたちは弱っちいから服を着るのよ!』

「はぁ……。」

「えっと、もー無いから上がって良いってアンナが言ってたわ。」

「あ、はい。お疲れさまでした。」


 私に汚れた皿を持ってくるおばさんが、怪訝けげんな顔をしていた。下着さんと指輪の会話は聞こえていないようだ。独り言で一喜一憂しているわけではない、という事は理解してくれているらしい。

 他のおばちゃんにも熱波を恐れて距離をとられているので、少し寂しい。私自身は暖かいので洗濯物とシャワーから一定距離のちゅうかんで作業するよう指示されている。温風器扱いである。


「泣いていい?」

『水は足りてるわよ。』

『日が動いているぞ? 早く動け。』


 慈悲もなかった。こいつらめ。

 モゾモゾと日当たりを調整していると、「我慢してないで行ってきなさい。」と言われる。あとでディアに泣きつこう。

 ディアは一人で走り回っている。私がいなくても回していけるみたい。感傷的になっちゃうなぁ。


『バカね。あんたがいるからディアは頑張れるのよ。』

「え? あ、そっか。」

『ほら、ディアが心配してチラチラ見てるわよ。』


 屋内のディアに小さく手を振ると、秒速で返してくれた。ちょっとジーンとした。


――――――――――


「日常回ね。」

「いいから仕事。」

「ぐっ、ほとんど終わったわ!」

「こことココ、修正して。」

「……ゆるして?」

「イヤよ、くるしみなさい。」

「私も泣きたくなってきたわ。」


――――――――――

 今日の被害

 酒場の常連:軽度やけど 10名

 おばちゃんたち:燃えた布で、やけど

 アンナ:頭痛 「セレスをどうするかね~……あっ。」

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