第50話 優雅とは

『光を浴びたい、脱いでくれ。』


 唐突に、沈黙を守っていた火の精霊したぎさんが言い放った。地上約300メートルの絶壁。村からは見えない、はず。それでもディアの目を気にしてモジモジしていると、服がぶわっと燃え上がった。


 替えの服なんて持ってないのに。つーか借り物の服……。


 熱くなかったのは下着ひのせいれいさんのおかげらしい。ありがとう下着。でもね、痴女になりたいなんて言ってないの。


 帽子マノンが風を操り、崖下までゆっくりと降下してくれている。

 下着が火を操り、燃え落ちた服の熱を緩和してくれている。

 指輪が水を操り、しっとりすべすべ……泣きたい。

 

「なぜ、空は青いのか。」

『青いから青い?』

「なかなかだね、マノンは。」

『バカね、私たちが青いからよ。』

「……こっちにも発展した化学があるの?」


 崖下に着き、起き上がろうとすると「待て。」と言われ、背中に石が当たって痛いので寝返りしようとすると「じっとしとれ。」と言ってくる。誰もいませんように。

 頭側から覗き込んできたディアが日の光を隠してくれる。少し眩しかったんだ、ありがとうディア。ん? 何で目を手で隠すの? お腹とか全部見えてるよ? 柔らかい手が心地良いけれど。


「セレス、がんばってね!」

『ぶふっ。』


 笑いやがったよ、指輪め。顏の前で指輪へ睨みを利かせるためにディアの手を少しズラすと——


 ——下着さんが発光していた……ごめん、セレス。屋外目隠し半裸発光してます。


――――――――――


「あんた、良いの? 痴女よ?」

「……何が言いたいのよ。」

「べっつにー。」

「ふーん、そういう。あ、そうそう。手伝ってた仕事、間違えてるから。」

「え?」

「がんばってね?♡」


――――――――――


 被害


 セレスの羞恥心「早く隠しなさい!」

 書類の山の修正「ほぼ全ページ間違えてんじゃないわよ!」

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