第44話 4の付く体で
「セレスがいるのは、分かるの。お願い、セレスに逢いたい。」
「……ごめんね? セレスに逢いたいのは、私もなの。」
私も座って、今度はディアの
以前、セレスと交流があった程度かと思ったら、重い話だった。
私が小屋で目覚めるまでに、セレスとディア、そしてマノンは数か月暮らしていたらしい。ディアの名付け親も言葉を教えたのもセレスだそうだ。マノンが間に入って翻訳していたと言うが、帽子は沈黙を守っている……寝てるのかな?
でもディアが私にくっついてくる理由も分かったし、これからの事を話したい。
「ディア、みんなの雰囲気が変わったみたいだけど、何で?」
「セレスがギルドで、おかしくなったと思われちゃったんだと思う。」
「おかしく? 洗脳、とか?」
風ギルドって、ヤベー所なの? ……首を縦に振るディアは、私から目を離さない。
ちょっと近づいてみる。おあずけしている犬みたいな反応をしている。
「おいで、うわっぷ!」
言った途端、飛びついてきたディアを受け止め、じゃれ合う空き部屋の外で、足音は遠ざかっていった。
「まったく、心配して損した気分だねぇ。はぁ。」
「じゃあ、アンナさんに心配かけてごめんなさい、しに行こうか。」
「うん。うん?」
「あ、私だけだっけ。」
「ついてく。」
ありがと、
私に気づいたおばちゃんたちが、顔を背けたり小さく手を振ったりと各々の反応を返してくる。アンナさんが溜息をつき、「あんたたち、今まで通りで良いんだよ!」と言ってくれたが、元通りになるまでは時間がかかりそうだ。
繋いでいた手が引かれ、顔を向けた私に「セレス、あっちで仕事しよ?」と言うディアは、少し嬉しそうだった。
「……で、こっちはこっちで、こうなのね。」
食堂でも、私に気づくと客が沈黙した。ディアが応対する客は明るく返事をする。私には空いた皿を投げ渡してくる……落としても割れないけれど、なんだかなぁ。
そんなに風ギルドは嫌われているのだろうか。
アンナさんから「セレスは悪くないけれど、今日は端で座ってておくれ。これでも食べな。」と、棒棒鶏のようなサラダをもらった……
『調べてあげようか?』
「ん? おえあいー。」(おねがいー)
『行儀悪いわね、食べながら言わないの。』
手づかみでパクついてる私に何を言うか、とテキトーに応答する。チラチラこっちを見てくる客もいるな。リップサービスも色気もあったもんじゃないだろうに。ん、おいし。
――――――――――――――
「ああいうの、周りはムカツクわよね。」
「キレイな子が『私なんてかわいくないから。』と言うアレですね。」
「メイド服を着崩して憂いを帯びた目をしていれば、酒場の男どもは落ちるわね……。」
「男に魅力で負ける気分は、いかがですか?」
「ぐっ……。」
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