第13話 正気 スマイル うちぬいた?

 食事処の求人を見て来たのに、正気かと言われた。


「え? ギルドでは食事処の接客だ、と……。」

「あ~、なるほどね。あんただまされてるよ、昼間は飯だけ、夜は出すからね。」

「じゃあ、今から働こうとしたら……。」

「あんたの『みてくれ』は悪くない、すぐ連れ込まれるだろうね。」

「その顏を見れば分かるけれど、酒場の給仕だけでも良いよ? 給金も同じでね。」

「あ、じゃあ給仕だけで。そっちの方は……ちょっと。」

「いいよ、よろしく。あたしはアンナってんだ。あんたは?」

「セレス、です。よろしくお願いします。」


 アンナさん以外のおばちゃんたちとも挨拶を交わしておく。注文を取ると思っていたが、客に出す食事は1種類しか作らないので不要だと。前払いなので、人数分を受け取り、厨房に人数を知らせるのが仕事だ。


「服は着替えたりします?」

「あー、ちょっと汚れが、前掛けで隠そうか。」


 やっぱり客に料理を提供するのだから、汚れはダメっぽいね。髪はおばちゃんが結い上げてくれた。……ほどけるだろうか、と一抹いちまつの不安を感じた。


 ほどなくして、ロシア帽とエプロンという不思議な恰好のウエイトレスが出来上がった。着替えに使用した物陰でマノンに食事を催促され焦ったが、食事ができるらしい。……無駄に高性能な帽子様マノンだ。

 ついでとばかりに笑顔の練習もしておく。笑顔なんぞ取引先とでもしないのにな。

 

「マノン、風でひらひらするんだけど。」

「風は止まないよ~。僕が風だし~。」

「……すっごく気になるフレーズ。」

「ねむねむ。」


 相棒が働こうという時に、食後の睡眠とか、当てつけか。……マノンはなんだろうなぁ、と記憶しているけど。

 っと、暇なのでテーブル拭きなどをしてたら、夜の部の1人目の客が来たようだ。茶髪の15歳くらいの青年で、所々汚れている。仕事終わった感が出てるなぁ。肩に手を当てて腕を回しながらの入店だ。

 初仕事の第一声はで言ってみよう。


 オッサンをなめるなよ、仕事と割り切るよ!


「いらっしゃいませー!」

「肩いってぇ……んがっ!?」

「……え?」


 入ってきた青年が入口でピタっと止まっちゃった。何か対応を間違えただろうか。

 おばちゃんたちを見ると、ため息をついている。あら、本格的に間違えたか? 謝った方が良いかな……。

 アンナさんが奥から歩いてきて、青年に拳骨を落としてをする。


「何やってんだい、あんたは。邪魔だよ、座りな。」

「いってーな、殴んなよな!」

「あ、あの、大丈夫?」

「……。」


 ええ? 声をかけたら、また止まっちゃったぞ? 何となく分かるけど、どうしたら良いんだ? アンナさんもため息ついちゃってるし!


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「撮ったわ、10枚は撮ったわ……。」

「良かったですね。」

「でも、折角着るなら給仕服も着てほしかった。」

「しれっと仕向けたら良いじゃないですか、しれっと。」

「それだ!」

「……やるんですね。」


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被害

厨房のおばちゃんの心「あら、うちのにも着せたら変わるかしらねぇ。」

青年の心「アンナさん、早く紹介して!」

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