ツンツクテン

あるまたく

蹴撃そして

第1話 満腹 5cm 半透明

「……あー、食べた。」


 夏。


 昼休憩に無性に食べたくなったラーメン。ジリジリと照りつける太陽を恨めしく思いながら、近所のラーメン屋に立ち寄った。昔ながらの佇まいで昭和の雰囲気を残したいらしい、店主オッサンが自慢気に語っているのを話半分に聞いたことがある。……水くれよ、あっちぃんだよ!

 この暑い中、わざわざラーメン屋に来た理由は、というあるメニューの存在だ。決して金欠ではない。


「で、にーさん、何にするんだい?」

に挑戦する。」

「げっ。」


 前回、俺が食べきったために卑怯ひきょうにも増量していたようだ。しかし俺の敵ではなかった。


 ……食い過ぎた。店に常備してある爪楊枝つまようじ掃除シーハーしながら店の外へ。店主が何か言っているまけおしみのを聞き流す。

 道端で上半身裸になるわけにもいかない。汗だくのTシャツを不快に思い、パタパタと無駄な抵抗をする。暑さのためか、軽い頭痛が……治まった?


「暑い……着替えたらすぐに戻ろう。」


 風が吹いていない上に日向なので暑い。


 仕事場まで徒歩数分の四畳ひと間のマイルーム。荷物が少ない俺にとって、手の届く範囲で納まる部屋は快適だ。着ている作業服ツナギのポケットから部屋のカギを出そうとする。


「痛……。」


 さっきよりも激しい頭痛に襲われ、何もできないまま倒れ意識を失った。最後に見た物が、さっきまで銜えていた爪楊枝とか……。


——————————————


「はーい、起きてくださいねー。」

「ぐほっ。」


 いきなり腹を蹴られた。目をあけ、上体を起こす。3メートルほど前に若い女性が立っている。笑顔だ……。周りは快晴の空のような色合いで、床は地平線まで起伏も無く白一色だ。……どこだ、ここ。


「ここは、ここよ!」


 うん、答えになってねーから。ってか読まれたか。ん? 蹴られたところが痛くない? 着ていた作業服はどこ行った?


「服なんて着てた?」

「借り物のツナギだよ!」

「ふーん、返せないんだし、どっちでも良いよね。」


 何を言っているんだ、こいつ。後ろの景色が透けて見えている。


「あー、時間無いから、要点だけ言うねー。これから行く所で頑張って生きて。大事そうに持ってた、あげる!」


 ソレって……爪楊枝じゃねーか。手元にある爪楊枝に目を落とした時、目の前に半透明の枠が表示された。


――――――――――

【名称】つまようじ

【原材料】白樺材

【規格】仕様サイズ:幅約6.5センチ、重量:約1グラム

【概要】つまようじ。箸や串程には長くない先の尖った木製の細い棒である。特殊な能力などない……まぁ、つまようじですし?

――――――――――


 これでどうしろってんだよ……。


「1本ってのもかわいそうだね!……ほい。」


 さっきよりも透けている女性が差し出したのは、500本入りで100円のな爪楊枝だった。


 目の前に映し出された枠は先ほどと同じで……いや、違った。


――――――――――

【名称】ギギ+3

【原材料】???

【規格】仕様サイズ:幅約6,5センチ、重量:約1グラム~1キログラム

【概要】つまようじ。箸や串程には長くない先の尖った細い棒である。特殊な加工により、持ち主から離れた状態が数分続くと【所持者】の手元に戻る。重量は【所持者】のみ変更可能。

【付与】固定ダメージ『1』:対象に固定ダメージを与える、精錬値によりダメージ上昇

    性質変化:事物にそなわった(固有のまたは着目時における)特徴を変化させる

    

【所持者】

――――――――――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る