魔法の道具屋筋

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

第一章 タコヤ・キプレート

タコヤ・キプレート 1

 身の丈ほどの剛剣をしまい、ギド・シェルヴィーは一息つく。汗を腕でぬぐい、自分が通った跡を振り返った。

 自分より遙かに巨大なモンスターの死骸が散乱している。ようやく、モンスターの軍勢が途切れたらしい。帰り道のことを考えると、まだまだ油断はできないが。

「おいルゥ、今日は戦果なしだと思うぜ。早くずらかろう。これ以上はもたん」

 帰りの非常食も心許ない。こうして、何の収穫もなく帰ることだって、珍しくないのだ。


 洞窟のお宝は、先駆者が探し尽くしたらしい。めぼしいアイテムが見つからず、もう引き上げようかと思っていた。


「待って、ここから何かが光ったんだよね」

 連れている魔法使い、ルゥドヴィカ・ローゼンクランツが、尻だけを突き出して、壁の穴に手を突っ込んでいる。ベージュにグリーンのラインが入ったミニスカートから、子どもらしい健康的な足が覗く。

「お、この感触は。ねえギド、変なものが見つかったよ」

 ルゥが、穴から手を抜こうとする。

 ルゥのしゃがんでいる場所のすぐ側には、木製の杖がフワフワと舞う。ルゥの周囲を警戒する魔術が施されているのだ。

「あれ、ひっかかっちゃった。ちょっとギド、そっちから引っ張ってくれない?」

 どうやら、腕が奥につっかえたらしい。

「待ってろ。そぉ、れっと!」

 ギドはルゥの腰を持ち、強く引き上げた。

「いたたた、よし、なんとか抜けそうだよ。ってうわぁ!」

 どうにか腕がすっぽ抜ける。

 勢い余って、ルゥはギドの胸の上で、尻餅をついた。

「おいおい、頼むぜルゥ」

「ごめんごめ……ん?」

「どうしたルゥ、変な虫でも……おわっ!」

 ようやく、ギドは事の重大さに気づく。


 ギドの手のひらが、ルゥが着ているベージュのワンピースにひかかっていた。そのせいで、服の下に着ている白いレオタードが露わになっている。「シロス・クミズ」というらしいが。


「ひゃああ!」と悲鳴を上げて、ルゥが飛び退く。杖を動かし、ギドの額を小突いた。

「痛っ、すまん!」

「いいよワタシの胸じゃあ、木片を触っているようなもんだしね」

 自身の貧相な胸をペタペタと慰めながら、ルゥが自虐的な言葉を零す。

「だから悪かったよ」

「ウソ。気にしてないよ。それより見てよ」

 身体を起こすと、ルゥのブロンドのロングヘアが、薄暗い洞窟内で光を放った。

 立ち上がり、ルゥは手にした戦利品をギドに見せる。

「これは、鉄板か?」

 座り込んだまま、ギドは金属のプレートを手に持つ。


 その物質は、黒くて厚めの鉄でできていた。その割に軽い。表面には、半球状の凹凸が複数見られる。


「見てみて。《トリセツ》まであるよ」

 ルゥが手に持っているのは、数ページしかない紙片の束だ。所々破れていて、魔法に精通している家系のルゥでも断片的にしか解読できないらしい。


「間違いなく『放浪物ワンダラー』だな」


「そうだね。どんな効果がある品物なのか。ウチで調べてみよう」


 ルゥが取り出したのは、本のように革製のカバーかかけられたガラス板だ。

 カバーには、滑り止めの紐が縫い付けられている。

 ガラスと言えど、ルゥの魔力が込められており、上質な金属より硬い。

 

 ルゥが紐部分に指をひっかけると、パカッと手帳のようにカバーが開く。

 続いて、ルゥは杖をペンほどの長さに圧縮した。杖の先にある水晶体を、スルスルと板に滑らせる。何かの呪文を描いているらしい。

 ガラス製の板に、赤い魔方陣が浮かぶ。


「記録開始」


 ルゥが、トリセツの先を板に当てる。

 ガラス板が、紙を吸収していった。トリセツ用紙は消えてなくなり、ガラス板に内容が記されている。

「よし、記録完了だね」


 トリセツをガラス板が取り込んだのを、ルゥは確認し終えた。

 板にフタをしてカバンにしまう。以下のように、ルゥはトリセツなどを手持ちのガラス板に読み込ませ、コレクションするのだ。


 この放浪物ワンダラーがなんなのか。薄緑に輝く瞳が、調べたくてウズウズしている様を物語っている。


◇ * ◇ * ◇ * ◇


 パンパンになった荷物袋を抱え、ギドとルゥは拠点である街に帰ってきた。

 ギドの背負う荷物の中身は、古代の宝や魔道書、剣や鎧などの装備品だけではない。


《ドゥグヤ・スージー》という地下迷宮は、こことは違う世界に繋がっているという。《スージー》から掘り出される用途不明の品々は、別の世界から迷い込んできたのではないかと噂されている。元の世界でお払い箱となって、自発的にこの地を訪れたのだとも。噂に触発された冒険者は、畏怖の念を込めて、スージーで手に入るアイテムを『放浪物ワンダラー』と呼んだ。


 放浪物は、大体が自分たちで掘り起こすだけではない。まれに持ち込まれたりもする。

 それの用途を調査するのが、店主のルゥと門番のギドが商う「ルゥの鑑定屋」。

 地下迷宮からさして離れていない場所にある、商店街で一番小さな店だ。

 田舎暮らしに飽きたルゥが、一発当てるためにこの街で商売を始めたという。


 店の前には、お隣の少女が腰に両手を当てながら、胸を張って立っていた。業務用エプロン姿で、手には鍋とオタマを持っている。

「げ、ランコさんじゃん。今日はついてないね」

 ランコの姿を確認すると、ルゥはギドの後ろにコソコソと隠れた。


 鑑定屋の前に立つランコ・タキチヤシキは、ルゥ達の所属する冒険者ギルドの管理人ギルドマスターだ。また、鑑定屋の隣に店を構えている、食事処の看板娘である。確か今頃は、働いている時間のはずだ。ギド達の帰宅時間を見越して、仕事を抜け出してきたのだろう。


「遅かったわね」

 こころなしか、ランコの声が低い。機嫌でも悪いのだろうか。

「あっ、こ、これはGM《ギルマス》さん、本日もご機嫌麗しゅう。今日もぽよよんなオッパイだねっ」

 話をそらそうと、ルゥが話題をランコの特徴でごまかす。

「セクハラ禁止! それより今月の家賃は?」

 オタマを振り上げながら、ランコが凄む。

「払う払います払うから、乱暴はやめて」

「ふざけてないで早くなさい。お客を待たせてるんだから」

 ランコが視線を隣の食事処に移す。短めのポニーテールがピョコンと跳ねる。

 店の中では、仕事を終えた街の人々や生還した冒険者達が、飯をかきこんで、酒をあおっていた。

「はぁい。どうぞ」

 渋々、ルゥは本日の戦利品を差し出す。

 GMのランコは、店から数名の男手を引き連れ、戦利品類を店の中へ運ばせる。

 宝石や古銭の入った袋はもちろん、ギドが背負う武器防具の類まで、一切合切取り上げた。

 毎回こんな調子だ。装備している品より格下だからいいものの。


「これは?」

 アイテム袋から、ランコが例の放浪物を掴もうとする。


「ああ、それはダメ! まだ未鑑定だから。触ると呪われるかも」

「じゃあ、どうやって持って帰ってきたのよ?」

「企業秘密さ」

 ルゥが調子よい言葉を放つ。

「まあ、家賃三ヶ月分ってとこね」

「やったぁ。当分働かなくて済むぞー」

 両手を挙げて、ルゥが小躍りした。

「それより、お腹空いたでしょ?」

「遠慮するよ。ボク達はまだ鑑定が」

 言ったそばから、ルゥの腹が可愛らしい音を鳴らす。ギドに至っては悲鳴に近かった。

「食・べ・な・さ・い!」

 ランコが、オタマでルゥの頭を叩くふりをする。

「ただでさえ細くて身体も小さいんだから、お腹いっぱい食べなさい。ギドも」

「そんな理屈だと、ギドは食べなくてもいいじゃんか!」

 ルゥが、ランコの持論に抗議した。

「食わせてくれ、ダンジョン帰りで日干しはゴメンだぜ」

「ギドは身体が大きいから、もっといっぱい食べなきゃね」

 そう言って、ランコは店の奥へ消えていく。


 店の前に置かれたガラス棚には、《蝋で固まった料理》がズラリと並ぶ。

 ギド達がスージーで拾ってきた品物だ。

 この店は、《蝋で固まった料理》を参考に、調理法などを推測して、実在する料理として再現し、客に出している。


 二人はランコの手料理を味わう。

 チュ・ウカ料理という異世界の食べ物らしい。

 火を噴く程に辛い料理もあれば、時に甘酸っぱいメニューも。独特の味わいだ。これも毎度のことだ。

「ごちそうさん。悪いな、いつも」

「いいのよ。お隣のよしみで勝手にやってるんだから。リクエストがあったら言ってね。大至急用意するから」

 やや猫なで声で、ランコはギドに笑顔を振る舞う。

「ランコの手料理なら何でも大歓迎だ」

「やっだあ! お上手なのねっ!」

 振り上げられたオタマの柄頭が、ギドの額に直撃した。

 反面、ルゥの皿は空になっていない。赤い野菜がゴロリと横たわっている。

「あんまり進んでないな」

「だって、ニンジン入ってるんだもん」

「甘辛くて美味いぞ」

「でもニンジンだよ?」

 フォークでルゥがニンジンを弄んでいると、ランコが横から口を出してきた。

「ウチの店で、いいえ。この世界で好き嫌いは御法度よ。生きるためなんだもん。何でも食べられるようにならなきゃ」

 仕方ない、といった表情で、ルゥはニンジンを口へ放り込む。一瞬苦そうな顔をしたが、適度な堅さと甘辛いタレは気に入ったらい。珍しく間食する。

 ところで、と、ランコが頬を染めた。両の指を胸の前でツンツンさせる。

「ギド、今度の週末なんだけど。新メニューの味見を……」

「そうか、すまんな。その日は初心者冒険者のトレーニングに付き添うんだよ。そいつらも誘っていいか?」

「……ええ、結構よ」

「ありがたい! 感謝するぜ」

 帰り際になぜか、ルゥがランコの肩をポンポンと叩いていた。

「GM、涙拭けよ」

「あんたには慰められたくないわ……」


 結局、この日は満腹感に負けて、ギドとルゥは自宅に着いた途端、眠りこけてしまった。


◇ * ◇ * ◇ * ◇


 翌朝、野菜スープに乾燥肉と固めのパンを浸した。昨日の余り物である。

 ふやけたパンを口へと運ぶ。先日は腹一杯食べたので、朝は軽めに済ませた。


 午前中は、依頼者の対応に当てる。といっても、既に鑑定済みの商品を依頼者に渡すだけ。

 できれば、早く金属板の鑑定をしたい。だが、先立つものだって必要である。四件の鑑定を終えて、依頼料も潤沢にもらった。当分は、長旅になっても困らない。


 鑑定屋は普段、マジックアイテムを売って生計を立てている。よその冒険者からの依頼も含めて、利益はそれなりだ。親友のよしみで食事代が浮いている。とはいえ、売り上げのほとんどは研究費に充てられ、家賃以外は残らない。


「さて、このデコボコな鉄板なんだけど」

 テーブルの上に、ゴトリと置かれる。

「名前はなんて言うんだ? 放浪物(ワンダラー)にはだいたい名前があるだろ?」

「えーっとねぇ、なになに、《タコヤ・キプレート》だって」

 手帳型の魔術版を開き、ルゥがトリセツを読み上げた。

「穴の数だが、全部で七つあるな」

 凹凸の部分は、中央にある一つの周りに、六つが規則正しく円を組んでいた。

「ここまで分厚いとなると、断熱性か?」


「分かったよ、ギド」と、ルゥが指を鳴らす。「これは調理器具だ」

「ほほう? 具体的には?」

「なんか、パイ生地みたいな液体をこのデコボコに流し込んでよ、焼き固めるんだよ」


「……ふっ」

 ギドは鼻で笑う。


「なんだよ、ワタシ、おかしいこと言ったかい?」

「発想は良かったな。鉄板は分厚いから、熱が関係していると想像したんだな。こんなに層が深かったら、生地が焼き切れない。だいたい、どうして生地を半球状にするのか、意味が分からんぜ」

 へこんだ部分に生地を流しても、生地の中までは固まらない。

「残念だな、天才ルゥといえど、調子が悪いときだってある」

「じゃあ、ギドはタコヤ・キプレートを何だと思うんだよ?」

 頬を膨らませて、ルゥが抗議してくる。

 知識がないなりに頭を働かせて、答えを脳内で導き出す。


「これは……そうだな、あれだ。召還儀式用のアイテムだ」


 やけくそ気味に、ギドは反論した。

「この凹んだところに、宝玉だか、モンスターの目玉だかを載せて、規則正しく並べるんだ。それによって、《コナモン》という伝説の怪物が誕生する」

「コナモン?」

「この古文書には、そう書かれている」

 ガラス板を借りて、項目に指を差す。

「所々に穴が空いて読めない部分のある文献が、何の役に立つんだよ?」

 ルゥは反論した。


 放浪物(ワンダラー)は、こちらの世界に漂流してきた際に、用途が微妙に変わることがあるらしい。

 トリセツと呼ばれる説明書も然り。

「この世界に来た影響で、環境に順応するために、変な翻訳をされるのだろう」と、ルゥが以前解説していた。


「そうだな。オレの案も見間違いかもな」

『魔法』スキルを持たず、魔力的な知識に疎いギドが言っても、説得力に欠ける。

 ここは、ルゥの意見に従うべきだろう。また拗ねたら面倒だし。


「待って。球状の物体が七つ必要だって、文献に書いてある」


 ルゥが、七つの球リストを別用紙に書き写す。

「ほとんどウチにある品物じゃん」


 店から集めてきたのは、桃源郷の種。化石になった古代イカの墨。アラクネの毛糸玉。炎の精霊の魂だ。

 どれも、つやつやした球状のものばかり。


「このリストで、ウチの店にないものは?」

「えっとね、《砂鉄胡の洞窟》の奥地を守るカトブレパスの目、《クレストール地帯》の女王が持ってる永久氷塊、《雨ざらしの古城》に住むオボロ竜の卵、だって」

 目的は決まった。二人は旅支度を始める。

「オボロ竜が強敵だな。でもオレ達ならなんとか倒せるかも知れない。とはいえ、回復要因は欲しいな。薬局ちゃんを連れて行くか?」


『薬局ちゃん』とは、『ルゥの鑑定屋』の向かいでポーションを売っている少女のことだ。


「そうだねえ。『回復』スキル持ちなら、向かいの薬局ちゃんかねぇ」

 ルゥが相づちを打つ。

「だろ? あの子のレベル上げにもなるぜ」

「でも、今回はいいよ。経験が浅いから死んじゃいそう。集める物が定まってるから『採取』スキルも必要ないし」

「この間も崖に落ちかけて大変だったしな」


 以前、近くの山で薬草を採ろうとして崖から落ちそうになっていた。ギドが助けて以来、ギドに懐いている。

 今では、たまにパーティを組んだりと、良好な関係だ。


「待って。ワタシも一緒に落ちかけたけど?」

「お前、宙に浮いてたじゃん」

 ルゥは短時間だけ、宙に浮ける。ほんの数秒レベルだが。

「だけどさぁ、ワタシの心配もしてくれたってよくない?」

「『ソーサレス』のお前と違って、薬局ちゃんは『ヒーラー』だから戦闘向きじゃないの。か弱いの」

 薬局ちゃんは、森の精霊と契約していて、回復魔法の心得もある。

「ふーん、薬局ちゃんの心配はするのに、ワタシはしてくれないんだぁ。そっかぁ」

 どうも、ルゥはヘソを曲げたらしい。

「その分、お前は戦闘面で頼りになるじゃん」

「ホント? 本当だね?」

 急に、ルゥが真顔になった。

「……ねえギド、本当だね?」

 笑っているのだが、ルゥの目だけ笑っていない。

「マジだって。お前だって女扱いされる方が迷惑だろ?」

「まあそうなんだけどさ。気分ってもんがあるじゃん?」

「だろ、じゃあ行くぜ」

 鑑定屋を出ると、ギドは店の前に置いた愛剣を掴んで背負う。ずっしりと重い感触が、背中に掛かる。これがギドの日課だ。


 相談の結果、向かいに住むヒーラーを相手に、薬だけ大量に購入した。

 冒険に出られなくて、薬局の娘は寂しがっていたが。

「マジでヒーラーは必要ないんだな?」

「OK。マジで危ないからね」

「場所だが、どこも遠いな」

「大丈夫。転送魔法が使えるよ」

 行ったことがある土地なら、一瞬で行き帰りできる魔法である。道に迷う心配もない。

「三件とも位置がズレてる。日帰りで往復しよう」

「じゃあGMに挨拶して出かけるとすっか」


 ランコに挨拶をするため、隣の食事処へ。

「今日も冒険に行くのね?」

 両手にコーヒーの入った陶器を持って、ランコがテーブルを回っていた。朝食を楽しむ冒険者達にコーヒーを振る舞っている。

「ああ、ちょっと深めに探索してくる」

「GMさんも来ればいいのに。ギルドにいる奴の誰より強いじゃん」

 ルゥが催促するが、ランコは店を気にしているのか、後ろを向く。

「ダメよ、管理人ですもの。店も忙しいし。今日だって、冒険資金の帳簿も上げてないのよ。それも三チーム分」

「うへえ」と、ルゥも絶句した。

 GMはギルド内でメンバーの財産管理なども請け負う。その役割ゆえ、デスクワークが主な仕事となる。

「でもGMの腕っ節なら、ギドにも負けず劣らうごっ!?」

 ルゥの発言を、ランコがヘッドロックで遮った。

「うおおギブギブ」と、ルゥがランコの腰にタップする。

「調子に乗るからよ。それに、あたしはこの店が性に合ってるのよ。自分の店を持つの、憧れだったもの。冒険も、資金稼ぎが目的だったし。お父ちゃんにも親孝行できたから」

 店主であるランコの父は、窓の向こうで鍋を振っていた。

「カツカツだったよね、当時のランコさんは」

 昔、ルゥとランコはパートナーだったらしい。

「まさに爪に火をともすってレベルだったよ」

「せっかく貯めた財産を湯水のように使うお前とは大違いだな」

「あのねえ、ワタシのは投資だから!」

 ギドが茶化すと、ルゥがムッとした。

「という訳で、お留守番してるわね。あ、そうそう。待ってて」

 ランコが奥へ引っ込む。しばらくすると、二つの包みをもって、ルゥとギドに一つずつ手渡す。

「はい、お弁当。二人分あるから。一人で全部食べちゃダメよ」

 包みからは、よく焼けたパンと野菜、焼けた肉の香りが同時に鼻を刺激してきた。

「わかってる。いつも悪いな」

「わーい、コンフェルトだー!」

 小瓶に入った小さな砂糖菓子を受け取って、ルゥが小躍りする。

「ありがとーGM。じゃあ行くよ、ギド」

 はしゃぐルゥを伴い、本格的な冒険が始まった。

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