Яe:Pwrite

ひな

第1話 始まりを告げる黒翼

マントナン国 聖都エスポア。

あちらこちらにある教会の内の一つ。

自分たちの神こそが、必ず世界をより良いものにしてくれると信じる4人の信仰者。

そこに、1人の頭から足の先まで真っ黒な人物が音もなく窓から入り込む。

「こんにちは、カルテットの皆さん。」

「ちょっとぉー、人の家に勝手に入っちゃダメでしょ?殺されちゃうよー?ふふっ♪」

静かな侵入者に、好戦的な表情を見せ臨戦態勢をとるのは、真っ赤な修道着を着た女性。

どこから取り出したのか、赤いシスターの手には長い棒の先に斧のような幅の広い刃物がついている、バルディッシュという武器が握られている。

「フューネ。」

「はいはーい。ちょぉっと脅しただけよ?」

やや強めの口調で名前を呼ばれ、赤いシスター基、フューネは口を尖らせつまらなさそうな顔をしながら武器を仕舞う。

「何か用かしら?烏さん」

フューネを制した黒いドレスの女性は、静かに、だが確実な警戒心をみせる。そんな姿に侵入者、烏は不敵に嗤う。

「おや、私をご存知でしたか。堕天のお姫様?」

「その呼び方はやめて下さる?」

一瞬で、宜しくない不穏な空気が走る。

「これは失礼。今日は1つ見えた未来をお告げに参りました。こちらを。」

悪びれた様子もなく、烏は黒い女性に1枚の紙を渡す。

フューネと同じ室内にいた青い服の男は黒い女性のもつ紙を覗き見る。

「なぁに?・・・22の災いが世界に散る。花残り月の朔、7つの星が舞い降りる。」

「7つの星は世界に光をもたらすであろう。招くは兎。導くは異界の守主。」

「黒き王は姿を変えて異界より舞い戻るが、不帰の客とならん。ー」

フューネ、青い服の男、黒いドレスの女性が順に読み上げ、烏はそれを不敵な笑みを顔に浮かべたまま眺め、一言言い放つ。

「この未来、このままでいいんですかい?」

その様子に、黒いドレスの女性は苦虫を噛み潰したような表情を一瞬見せるが、直ぐに元の表情に戻す。

「・・・態々、お知らせ頂き感謝致しますわ。・・・お引取りを。」

「それでは。また、いずれお会いしましょう。」

烏は終始笑顔を貼り付けたまま、烏となって窓から飛び立つ。その様子に室内にいたピンクのふわりとした洋服をきた少女が瞳を輝かせる。

「すごーい!鳥さんになって飛んでったぁ!!」

「ナーサリー、真似しちゃダメよ。それより、もうすぐ面白いことが始まるかもしれないから、準備してらっしゃい。」

ピンクの少女、ナーサリーに黒いドレスの女性は、まるで自分の子供に言い聞かせるように注意し、少女の関心を別のものへとすり替える。

「面白いこと!?準備してくるー♪」

ナーサリーは、花を咲かせたような笑顔を見せ、自分の部屋へと駆けていく。その様子を見届け、青い服の男が黒い女性に神妙な面持ちで尋ねる。

「ワルツ、どうるする?」

「私が行くわ。暫く空けるわね。ラプ、ここは頼んだわよ。」

黒い女性-ワルツが、間髪入れずに応え、それに頷く青い服の男-ラプ。


それぞれ、首からさげた揃いの十字架を握りながら、ワルツ、ラプ、フューネの3人の声が重なる。

「我らが主のために。正しい旋律を。」




✄- - - - - - キ リ ト リ - - - - - ✄

初めまして、作者のひなと申します!

この度は、Яe:Pwrite第1話を読んでいただきありがとうございます((*_ _)

自分の創る物語をこういった場所で公開するのはこの作品が初めてになります。

暖かく見守って頂けたら嬉しいです。




次回、「始まりの始まり 朝」

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