第16話 よしき

高校生になってから前田さんは急にモテ始めた。

同じ中学だった僕は頻繁に呼び出され、前田さんのあれやこれやの質問に答える毎日だった。


大半は「メールアドレスを教えて」だったが、僕は携帯電話を持っていないので知る訳も無い。


というよりも、前田さんの事は何も知らない。

何処に住んでいるのか?

家族は?

兄弟は?

血液型は?

良く考えれば何も知らない。

周囲も段々と僕のポンコツ振りが分かったのか「前田さんの◯◯教えて?」は次第に消えて行った。


図々しい男子たちが昼休み、前田さんの所に良く集まる所を遠巻きに見ていた。

男子が集まる所には女子も多く集まり、一つのグループを作り上げていた。

前田さんは中心人物だったが困った顔して、笑っていた。


「なんなん? 自分も前田さん、好きなん?」

「え?」


不意打ちだった。

見ている事がバレる事など無かったのに、隣の席の関西弁男子に即バレした。


これがよしきという男の出会いだった。


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